日本救急医学会雑誌
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重症敗血症に酷似した病態を呈した,Sweet症候群の1例
平山 陽中西 加寿也島田 忠長奥 怜子平澤 博之織田 成人
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2005 年 16 巻 12 号 p. 652-659

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抄録

はじめに:重症敗血症に酷似した病態を呈したSweet症候群の1例を経験したので報告する。症例:患者は32歳の女性。ICU入室11日前に男児を出産。その際に会陰切開施行される。翌日より39℃の発熱,血液検査上炎症反応を認めた。創感染を疑い,抗菌薬投与開始。またICU入室5日前頃より注射施行部に有痛性隆起性紅斑を認めた。抗菌薬投与を継続するも血圧低下,両側肺浸潤影を伴う呼吸状態の悪化を認め,敗血症,敗血症性ショック,敗血症性ARDS (acute respiratory distress syndrome)の疑いで,ICU入室となった。第2 ICU病日に骨盤部CT検査施行。骨盤内膿瘍が疑われ,同日ドレナージ術施行。ドレナージ液も含め各種培養検査を施行するも結果は全て陰性であった。感染症以外の疾患の存在を疑い,注射施行部に認められた有痛性隆起性紅斑に関し皮膚科医にコンサルテーションしたところ,Sweet症候群と診断された。そしてこの重症敗血症様の病態もSweet症候群に関連するものと判断された。第4 ICU病日よりSweet症候群に対してステロイドパルス療法を施行。その後すみやかに呼吸状態改善,炎症反応低下。第8 ICU病日に退室となった。考察:Sweet症候群は発熱,白血球増多などの炎症所見を呈し,かつ皮膚に有痛性隆起性紅斑を認める比較的まれな原因不明の皮膚疾患である。文献的には本症例のように重症敗血症に酷似した病態を呈したSweet症候群報告例はいままでに2例のみであり,稀な症例であった。病因は不明であるが,病理所見上好中球の増多,活性化が特徴的であり,好中球の活性,遊走に関わるG-CSF (granulocyte colony-stimulating factor)などのcytokineの関与が考えられている。治療としては感染症様症状を呈するも抗菌薬に全く反応せず,ステロイドが著効を示す。そのため,早期の診断,早期のステロイド投与が肝要である。結語:重症敗血症に酷似した病態を呈したSweet症候群の1例を経験した。感染症が疑われるが,抗菌薬に不応で,培養検査が陰性の症例はSweet症候群である可能性がある。

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