日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
著明な血小板減少を来したマムシ咬傷の1例
藤田 基山下 進河村 宜克鶴田 良介笠岡 俊志岡林 清司前川 剛志
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 16 巻 3 号 p. 126-130

詳細
抄録

今回われわれは,典型的な症状を伴わず,受傷後早期に著明な血小板減少を来したマムシ咬傷の1例を経験したので報告する。症例は72歳の女性。右下腿をマムシにかまれ受傷した。近医を受診したが,吐血,眼瞼結膜からの出血,全身の皮下出血を認めたため,受傷約2時間後に当センターへ転院となった。来院時,右下腿の腫脹は軽度で,咬傷部を中心に出血斑を多数認めた。全身の皮下出血,眼瞼結膜からの出血,吐血および胃管からの血性排液を認めた。血小板0.3×104/mm3と著明な血小板減少を認めたが,凝固系の検査所見は正常であった。直ちにマムシ抗毒素6,000単位を点滴静注し,濃厚血小板20単位を輸血した。その後血小板数の上昇を認め,抗毒素投与4時間後には16.7×104/mm3と著明な改善を認めた。血小板の上昇とともに,眼瞼結膜・胃管からの出血も改善した。その後経過良好であり,第14病日に転院となった。マムシ咬傷において局所の腫脹が顕著でなく,著明な血小板減少を来す症例は非常にまれであり,「血小板減少型」と定義される。このような「血小板減少型」のマムシ咬傷は,マムシ毒素が血管内に注入された結果生じると考えられ,早期にマムシ抗毒素の投与を考慮する必要がある。

著者関連情報
© 日本救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top