抄録
全国の救命救急センターと大学病院救急部における外傷登録の現状とそのデータベース化における問題点を検討するため,アンケート調査を実施した。上記全224施設に調査票を郵送し,84施設から回答を得た(回収率38%)。調査票の内容はおもに各施設における診療記録のデータベース化の現状とその問題点,日本外傷学会が試案した外傷登録データベース「日本外傷データバンク(JTDB)」に対する期待,参加予定についてである。回答施設のうち47施設(56%)が診療記録をデータベース化しており,そのうち入力スタッフを有していたのは9施設であった。データベース化におけるおもな問題点として,入力に伴う負担と入力情報の質の問題が挙げられた。その対策として入力スタッフの確保・育成,人件費の予算化,入力作業と入力項目の簡素化などの必要性が指摘された。JTDBへの参加は61施設が予定しており,JTDBに対しては医療の質の向上,病院間・地域間格差の是正,スタッフの外傷に対する意識の向上,救急隊との情報の共有,事故防止の観点から期待が寄せられていた。JTDBは医療の質の監査だけでなく,入力負担の軽減や入力情報の質の向上にも資することから,その普及が望まれる。