日本救急医学会雑誌
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検知管により早期診断し,かつ被殻病変を画像診断し得たメタノール中毒の1例
伊関 憲市川 一誠永野 達也栗原 正人堀 寧土田 浩之川前 金幸
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2005 年 16 巻 4 号 p. 175-181

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抄録

今回われわれは定性反応によりメタノール中毒と診断し,早期の血液透析により救命できた1例を経験した。本症例ではMRIによりメタノール中毒による被殻病変についての知見を得たので併せて報告する。24歳の男性が2日前の夜,容器に入れたアルコールを飲み物に混ぜて飲酒した。気分不良のため,近医受診した。意識レベルの低下と高度の代謝性アシドーシスを認め当院救急部に転院搬送となった。尿中アルコール定性検査で陽性であり,メタノール中毒と判断し血液透析を2回行った。頭部CTを施行したところ,脳腫脹と両側被殻のLDAとその拡大を認めた。MRI上ではFLAIR像で被殻とその周囲に高信号域を,拡散強調像では被殻の高信号域を認めた。この所見から被殻での細胞の浮腫と被殻周囲の細胞外組織の浮腫があることが判明した。さらにSTIRでは視神経の浮腫が判明した。意識レベルは徐々に上昇し,退院前には手動弁を認識できるまで視覚は改善した。退院前のMRIでは被殻の細胞死を認めた。後日,血清中のメタノールおよびギ酸の血中濃度をGC/MSを用いて測定したところ,それぞれ2.7mg/ml, 969.0μg/mlと致死量であった。本症例では北川式アルコール検知管と代謝性アシドーシスによりメタノール中毒を同定することができた。また,MRIで拡散強調像とFLAIR像を比較することで被殻の状態を詳細に評価できた。

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