日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
救急心電図電話伝送システム
運用の実際と有用性
藤原 秀臣秋山 淳一徳永 毅雨宮 浩青沼 和隆家坂 義人今野 誠一
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 2 巻 1 号 p. 49-55

詳細
抄録

救急医療においては,救急現場および救急患者搬送に関与する救急隊の果たす役割がきわめて大きい。しかし,救急隊員の努力もむなしく救急車内で病態が急変し不幸な転帰をとる患者も少なくないことから,救急隊員の救急処置の向上も必要とされてきている。そのためには従来行われている患者のvital signsの把握のほかに,生体情報としてもっとも重要である心電図を救急車内からCCUへ直接伝送し,専門医が速やかに判読し適切な救急処置を指示するというシステムの導入が不可欠である。そこで最近目覚ましく普及した自動車電話と音響カプラーを組み合わせて“救急心電図電話伝送システム”を開発し運用を試みた。本システムの機構上の利点としては,第一に救急隊員が患者の胸壁にパネルを当てるだけで容易に心電図が伝送できること,第二に自動車電話を用いているので,特殊な認可が不要で,いつでもどこでも運用でき対話が容易であること,第三に音響カプラー方式であるので心電図伝送が直接的,即時的であることなどが挙げられる。本システムは1989年6月より運用を開始し,1990年8月までに43例に施行され,心疾患が12例,他の疾患が31例であった。心疾患の内訳は,急性心筋梗塞2例,狭心症4例,心不全2例,不整脈4例であった。伝送心電図の所見は,洞調律24例,洞性頻脈5例,洞性徐脈1例,頻拍性心房細動2例,完全左脚ブロック1例,心停止5例,ST偏位5例(梗塞パターン2例)であった。本システム運用の結果,救急車搬送中の心疾患患者の病態や重症度が予知できるため,CCUでの受け入れ体勢が整えやすく迅速・的確な処置が可能であった。また,他の疾患についても循環動態の推定ができ,軽症例のスクリーニングも可能であった。さらに救急隊との連携が強化され,地域救急医療の充実が図られると考えられた。

著者関連情報
© 日本救急医学会
前の記事
feedback
Top