日本救急医学会雑誌
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心不全症例に対する左房-大腿動脈バイパスによる経皮的補助循環の有用性
村松 俊裕元山 猛許 俊鋭宮本 直政今福 博司尾本 良三土肥 豊
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1993 年 4 巻 6 号 p. 605-610

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抄録

目的:心不全症例に対する,左房-大腿動脈バイパス(以下AABと略す)による経皮的左心補助の有用性を検討すること。方法:心筋梗塞に続発した心停止(3例)と心原性ショック(2例)の5症例に対して,独自に開発した経皮的に挿入可能な左房脱血カニューレを用いたAABを試み,その有用性を右房-大腿動脈バイパス(以下VABと略す)と比較した。結果:心停止3例に対して,最初VAB補助を施行した左心不全の克服が困難なため,平均16時間後に2例でAABの移行に成功し,1例を96時間の心肺補助の後救命できた。移行不成功の1例は,29時間のVAB補助を施行したが死亡した。また,1ヵ月のintra-aortic balloon pumping(以下IABPと略す)依存状態の心原性ショックで肺水腫に陥った症例では,最初からAABを施行して3日間の補助で左心不全を克服して手術治療に移行できた。VABでは中等度の出血傾向は避け得なかったが,AABに移行することで出血傾向を克服できた。結語:心停止に対する迅速な対応はVABが優れていたが,長期の左心不全に対する補助としては不十分で,VABのみで早期の回復が期待できない症例に対しては速やかにAABに移行することが望ましい。

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