日本救急医学会雑誌
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虚血性心疾患に由来するdead on arrival,突然死の検討
尾池 雄一緒方 康博沼田 裕一辻 武志本山 剛水政 豊
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1994 年 5 巻 7 号 p. 681-687

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抄録

目的:内因性突然死の半数以上が,虚血性心疾患によるといわれている。そこで,虚血性心疾患に由来するdead on arrival(以下DOAと略す),突然死の症例を予防できないか検討した。対象:1986年1月から1992年3月までに当院救命救急センターに搬入された215例(内因性DOA109例,突然死106例)。方法:データはすべて当院および他院(前医,かかりつけ医)のカルテ,および患者本人,家族,他院の医師からのインタビューによる後向き調査により収集した。死因を,諸データより特定し得たdefinite群119例,病歴および発症時の状況より強く推定し得たprobable群49例,まったく不明のunknown群47例に分類し,このうちdefinite群とprobable群の計168例を検討した。結果:心血管系死因が54例(32%)を占め,そのうち急性心筋梗塞(以下AMIと略す)は30例(56%)であった。AMI 30例中23例(77%)に梗塞前狭心症の既往を認め,そのうち22例が新規狭心症,1例が増悪型狭心症であった。梗塞前狭心症の初発からAMI発症までの期間と医療機関受診の有無との関係の検討では,1日以内の症例12例中医療機関を受診したものは2例のみであり,2日以上の症例11例中10例が医療機関を利用していた。医療機関を受診した12例中6例は狭心症との診断を受けることなく放置され,6例は狭心症の診断のもとに投薬が開始されたが,入院のうえ冠動脈造影を受けた例は1例もなかった。結語:患者側に対しては狭心症,とくに新規狭心症の重大性につき認識を深め,速やかに医療機関を受診するよう啓蒙する一方,医療機関に対しては薬物療法のみで安心することなく速やかに冠動脈造影を施行し,最も適した治療法を選択することが重要であることを認識してもらう必要がある。これらのことにより,虚血性心疾患に由来するDOA,突然死を減少させることが可能である。

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