日本救急医学会雑誌
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重症患者に対する早期グルタミン加経腸栄養の有用性に関する臨床的研究
片岡 祐一杉本 勝彦相馬 一亥大和田 隆
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1995 年 6 巻 1 号 p. 16-24

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抄録
ICU入室重症患者の急性期の異化期において,早期グルタミン加経腸栄養の有用性を検討する目的で,臨床的なprospective studyを行った。ICU入室患者で急性期に経腸栄養を開始した21症例を3群に分けた。経腸栄養剤のみを投与した症例を対照群(n=7)とし,経腸栄養剤にグルタミンを標準体重あたり0.2g加え投与した症例をI群(n=7), 0.5g加え投与した症例をII群(n=7)とした。なおこの3群間での総投与熱量と窒素量は同一になるように調節した。I群,II群と対照群との間でAPACHE-II scoreに明らかな差は認めなかった。栄養評価の指標となる血清蛋白質(総蛋白,アルブミン,プレアルブミン,レチノール結合蛋白,トランスフェリン)のI群,II群の10日間の変化は,対照群と比較して明らかな差は示さなかった。しかし尿中3-メチルヒスチジン濃度の10日間の変化では,I群,II群とも対照群と比較して有意に減少していた(対照群:0.06±0.05mEq/gCr, I群:-0.03±0.03, p<0.05, II群:-0.04±0.03, p<0.05)。窒素平衡は,経腸栄養開始日では有意な差はなかったが,10日目で対照群に比べI群,II群が有意に高値を示した(対照群:-10.1±2.7g/day, I群:-3.0±2.0, p<0.05, II群:-1.6±1.1, p<0.01)。感染性合併症率は,II群が対照群に比べ低い傾向を示したが有意差は認めなかった。下痢の頻度,臓器機能障害(肝・腎)の程度,予後に関しては,対照群に比べI群,II群で明らかな差は認めなかった。これらの結果より,グルタミンを加えた早期経腸栄養は,ICU入室重症患者に対して,合併症なしに異化亢進と窒素平衡を改善することが示された。
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