日本救急医学会雑誌
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急性期脊髄損傷におけるメチルプレドニゾロン大量療法の臨床的意義
横田 裕行川井 真加藤 一良益子 邦洋山本 保博辺見 弘大塚 敏文
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1995 年 6 巻 4 号 p. 349-354

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抄録

受傷後24時間以内の脊髄外傷症例38例を対象として,受傷後2週間での神経学的な変化に注目し,MPSS大量療法の効果について検討した。MPSS投与群16例,非投与群22例に対し,画像診断と神経学的徴候を考慮して外科的あるいは保存的治療の選択を行うとともに,MPSS投与群の症例にはNASCIS IIの方法に準じたMPSSの大量療法を実施した。運動機能と知覚機能の評価はNASCIS IIの方法に準じて行い,両側14筋群に関する運動機能とC-2からS-5までの両側29髄節におけるピン痛覚,触覚に関する知覚機能を判定した。その結果,運動機能に関しては,受傷後2週間時において,MPSS投与群16例中3例にスコア2点ないし6点の改善が認められ,悪化例はなかったのに対し,MPSS非投与群22例では改善例はなく,2例においてそれぞれスコア15点および20点の悪化がみられた。知覚機能に関しても同様に,MPSS投与群でスコア1点ないし13点の間で5例に改善が認められ,悪化例はなかったのに対し,MPSS非投与群では,1例にスコア2点の改善が認められた一方,スコア1点ないし25点の間で5例に悪化がみられた。両群におけるこれら神経学的所見の改善に関する差は有意であり,今回の検討の結果から,神経学的所見の悪化に対応すると考えられている二次的脊髄損傷を最小限に止める目的で,MPSSを受傷後可能な限り早期に大量に使用することは有用であることが示唆された。

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