日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
SIRS, MODS,敗血症性DICにおける血中tissue factor及びtissue factor pathway inhibitorレベルの変動
射場 敏明八木 義弘木所 昭夫福永 正氣永仮 邦彦工廣紀 斗司
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 8 巻 12 号 p. 650-658

詳細
抄録
敗血症では比較的早期から過凝固状態が存在するが,これには単球/マクロファージや血管内皮細胞におけるtissue factor (TF)の表出による外因系凝固の活性化が考えられている。今回敗血症症例において血中のTFおよびその阻害作用を持つtissue factor pathway inhibitor (TFPI)の測定を行い,臓器障害やDICとの関連性を検討した。さらにインターロイキン6 (IL-6),好中球エラスターゼ(PMN-E),トロンボモジュリン(TM),エンドセリン1 (ET-1), thrombin antithrombin III complex (AT III), plasmin-α2 plasmin inhibitor complex (PIC)とTF, TFPIとの関係も検討した。対象はSIRSの基準を3日間以上連続して満たした敗血症38例で,このうち20例では臓器障害はみとめられず(SIRS群),10例はDIC以外の臓器障害を合併し(MODS群),8例はDICを含む多臓器障害を合併した(DIC群)。結果:DIC群におけるTFレベルは254.2±144.1pg/mlでMODS群やSIRS群よりも有意に高値であった。DIC群におけるTFPIも同様に,その他の群に比し有意に高値をとっていた。そして,TFは血管内皮の障害の指標であるTMやET-1と比較的高い相関を示したが,IL-6やPMN-E, TAT, PICとの間には相関はみられなかった。一方,TFPIではTMやET-1に加えIL-6やPMN-Eとの正相関もみられた。TF, TFPIとも凝固・線溶の指標したTAT, PICとの相関はみられなかった。結語:TFやTFPIは敗血症時に血管内皮の障害に伴って血中に放出され,DICのような内皮障害が高度である状態で高値を示すものと考えられた。しかしTFの分布はばらつきが大きく,TFPIは変動が軽度であるため重症度指標としての有用性には疑問が残った。
著者関連情報
© 日本救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top