日本乳癌検診学会誌
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原著
硬化性腺症を背景に発生した乳癌の臨床像の検討
大岩 幹直遠藤 登喜子白岩 美咲西田 千嘉子森田 孝子佐藤 康幸林 孝子加藤 彩市原 周森谷 鈴子長谷川 正規篠原 範充
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2011 年 20 巻 3 号 p. 196-203

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抄録

硬化性腺症を背景にもつ乳癌は,近年診断する機会が増加している疾患であるが,その臨床像の検討がなされた報告は少ない。そこでわれわれは,硬化性腺症を背景にもつ乳癌の臨床像を明らかにするために,臨床所見の検討を行った。2005年1月から2009年12月に名古屋医療センターで生検,切除などにより病理組織学的に硬化性腺症と診断された57人を対象とした。
乳癌合併例は42人で,初発片側乳癌手術時の平均年齢は47.8歳と,全乳癌に比べ有意に若かった(p<0.0001)。発見契機はマンモグラフィ検診による無自覚症例が多く,乳癌合併例で40.5%(17/42)であった。乳癌合併例は両側乳癌比率が26.2(11/42)と高く,さらに片側乳癌31例には多中心性発生と考えられる癌の合併が8例に認められた。また浸潤性乳癌発生のリスク病変の合併が片側乳癌の48.4%に認められた(15/31)。合併した癌の組織型,組織学的異型度,intrinsic subtypeに明らかな特徴は認められなかったが,初発片側乳癌では非浸潤性乳管癌の比率が54.1%(20/37)と有意に高かった(p<0.0001)。癌合併例の多くが早期発見されるために良好な予後が期待されるが,異時多発乳癌の発生に十分留意し,温存乳房のみならず対側乳房に対しても慎重な経過観察が望まれる。

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© 2011 日本乳癌検診学会
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