厚生労働省は乳がん検診の検診項目としてマンモグラフィを推奨し視触診は積極的に推奨しない方針である。しかし視触診とマンモグラフィの併用検診が広く行われているのが現状である。横浜市乳がん検診では「視触診要医療」という判定区分を設け,視触診で明らかに乳がんを疑う所見がある場合にマンモグラフィ判定を省略して精密検査受診勧奨を行うことができる。今回の検討では視触診要医療判定を受けた受診者の特徴から横浜市乳がん検診における視触診の位置付けについて考察した。対象と方法:2006 年度から2018 年度の12 年間に横浜市乳がん検診を受診したのべ731,411 名を対象とした。視触診要医療群とそれ以外のマンモグラフィ視触診併用群について陽性反応的中度を比較した。2群の差の検討にカイ2乗検定を用い有意水準をp<0,05 とした。成績:12年間の検診発見乳がんは2,324 名であった。うち視触診要医療群の発見乳がんは482 名で,検診発見がんの20.7%を占めていた。視触診要医療群の陽性反応的中度は18.2%でありマンモ視触診併用群の4.4%に比し有意に高かった(p<0.01)。考察:視触診要医療群の受診者は本来なら検診の対象にならない有症状者を多く含むと推測される。視触診は検診項目というよりは問診や受診者教育の一部として機能している側面があると思われる。受診者教育を現代に合わせて再編し,視触診を担当する医師にその一部を担っていただくことでより良い検診の目指せるのではないかと考える。
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