日本乳癌検診学会誌
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第33回学術総会/シンポジウム2 乳がん検診に視触診は不要である!
  • ~公正な乳がん検診の導入に向けて~
    植松 孝悦
    2024 年 33 巻 2 号 p. 95-102
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
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    2013 年に策定された乳がん検診ガイドラインでは,マンモグラフィと視触診の併用法がマンモグラフィ単独法と同じ推奨グレードB で推奨されたが,その根拠の手法については疑問が残る。このガイドラインは10 年以上改定されず,さらに対策型乳がん検診の指針に“マンモグラフィと視触診の併用法”のみを行うように通達されていた背景もあり,日本では引き続きマンモグラフィと視触診の併用乳がん検診が行われている所もいまだに多い。視触診は乳癌死亡率の減少効果が証明されておらず,精度管理が困難で偽陽性や偽陰性が多いため,2016 年2 月の指針改正で乳がん検診の必須項目から除外されている。2021 年には,診療放射線技師が医師の立ち会いなしにマンモグラフィ撮影を行うことが認められ,乳がん検診受診の機会を増加することが可能となった。今後は視触診に代わる新たなサービスとして,ブレスト・アウェアネスの啓発が推奨されるべきである。そして,次世代乳がん検診は,高濃度乳房の女性に対しても効果的で「公正な」乳がん検診の方法が導入されるべきである。
  • 俵矢 香苗, 久保内 光一, 土井 卓子, 水谷 隆史, 戸塚 武和, 東 健一
    2024 年 33 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル 認証あり
    厚生労働省は乳がん検診の検診項目としてマンモグラフィを推奨し視触診は積極的に推奨しない方針である。しかし視触診とマンモグラフィの併用検診が広く行われているのが現状である。横浜市乳がん検診では「視触診要医療」という判定区分を設け,視触診で明らかに乳がんを疑う所見がある場合にマンモグラフィ判定を省略して精密検査受診勧奨を行うことができる。今回の検討では視触診要医療判定を受けた受診者の特徴から横浜市乳がん検診における視触診の位置付けについて考察した。対象と方法:2006 年度から2018 年度の12 年間に横浜市乳がん検診を受診したのべ731,411 名を対象とした。視触診要医療群とそれ以外のマンモグラフィ視触診併用群について陽性反応的中度を比較した。2群の差の検討にカイ2乗検定を用い有意水準をp<0,05 とした。成績:12年間の検診発見乳がんは2,324 名であった。うち視触診要医療群の発見乳がんは482 名で,検診発見がんの20.7%を占めていた。視触診要医療群の陽性反応的中度は18.2%でありマンモ視触診併用群の4.4%に比し有意に高かった(p<0.01)。考察:視触診要医療群の受診者は本来なら検診の対象にならない有症状者を多く含むと推測される。視触診は検診項目というよりは問診や受診者教育の一部として機能している側面があると思われる。受診者教育を現代に合わせて再編し,視触診を担当する医師にその一部を担っていただくことでより良い検診の目指せるのではないかと考える。
  • ~当院の任意型乳癌検診データから考察する
    塚田 弘子, 清水 由実, 野上 真子, 野口 英一郎, 青山 圭, 明石 定子
    2024 年 33 巻 2 号 p. 110-113
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル 認証あり
    本邦の対策型検診は1987 年の視触診単独法に始まり,2000 年にマンモグラフィ検診導入後も視触診は併用されてきた。しかし,視触診による死亡率減少効果は不明であること,精度管理が不十分であることから2016 年に視触診は検診項目から削除された。当院では,任意型検診として視触診・マンモグラフィ・乳腺超音波検査を施行している。2021 年1 月~ 2023 年5 月に当院任意型健診を受検した225 例の女性を対象に,検診における視触診の位置付けを検討した。 年齢の中央値は68 歳,全例で視触診・乳腺超音波検査が施行され,188 例にマンモグラフィが施行された。視触診異常は51 例(22.7%),うち34 例(66.7%)が腫瘤触知もしくは腫瘤疑いであり,他検査で同部位に異常がみられた症例は2 例であった。マンモグラフィ異常は9 例(4.8%),うち2例に生検が施行され,1 例が浸潤性小葉癌の診断となった。乳腺超音波検査異常は21 例(9.3%),うち5 例に生検が施行され,1 例が浸潤性乳管癌の診断となった。 2 例の乳癌症例はいずれも視触診で異常がみられなかった。一方で,視触診異常を指摘された34例に乳癌はみられなかった。画像で指摘された腫瘤影の中央値は8mm であり,視触診で適切に病変を指摘することは困難であると考えられた。 近年,本邦でも「ブレスト・アウェアネス」の概念が広まっているが,必ずしも視触診は必須ではなく,「乳房を意識した生活習慣」が正しいがん予防教育において重要であり,広く周知されるべき概念である。
  • −高知県の視触診検診の成績から−
    安藝 史典, 伊藤 末喜, 山川 卓, 杉本 健樹, 藤島 則明, 高橋 聖一, 上地 一平, 尾﨑 信三, 中村 衣世, 川村 貴範, 岡 ...
    2024 年 33 巻 2 号 p. 114-119
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
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    【はじめに】がん検診の目的は,死亡率減少である。以前に行われていた視触診乳癌検診の結果と,個別検診で行われていた視触診併用マンモグラフィ乳癌検診の結果から,視触診の有用性について検討する。 【乳癌検診体制】高知県では,昭和48 年から視触診による乳癌検診が開始された。平成16 年から,個別方式と集団方式でマンモグラフィ検診が開始され,個別方式では視触診が同時併用されたが,集団方式では全国に先駆けて最初から視触診は行われなかった。現在では,個別方式でも視触診は行われていない。 【乳癌検診結果】初期の視触診検診の要精密検査率は3.5%,乳癌発見率は0.13%。高知県の乳癌標準化死亡比は,受診率が15% 以上の市町村において,死亡の減少効果がみられている。自己検診は,過去に検診を受診している人が高い割合で行っていた。乳癌患者の早期率を受診歴で比較すると,受診歴のある患者で割合が高かった。年間約50 名の医師が視触診に従事した。マンモグラフィ検診の開始時5 年間の成績は,単独群で,要精検率は6.9%,発見率は0.31%。併用群で,要精検率は10.9%,発見率は0.58%。早期乳癌割合は79.40% と70.30%,一年中いつでも受けられるため,有所見者が多くなった。 【まとめ】視触診は,ブレスト・アウェアネスの観点からは有用であり,マンモグラフィで診断できない乳癌を発見できる可能性はあるが,精度管理,費用,人的負担,検診の不利益の点から,現在の乳癌検診にはそぐわない。
  • 島田 菜穂子
    2024 年 33 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
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    受診者,提供者双方に許容される正しい視触診廃止のためには,起こりえるunhappy case の特徴を知り,それを無くすべく対策を行うことが不可欠である。 ブレストアウエアネスによって正しい視触診廃止が可能となるか,乳房を意識する生活,すなわち狭義のブレストアウエアネスという観点から,更に医療提供者,あるいは社会全体を対象とする広義のブレストアウエアネスの観点から検討を行った。 乳房を意識する生活すなわち狭義のブレストアウエアネスのみで,視触診廃止により取りこぼしが起きる可能性のある病変をすべて自己認識できるか?その答えはNo である。この問題を解決するには更に以下の3つの視点,即ち広義のブレストアウエアネスが必要となる。一つ目の視点は検診提供者医療従事者のブレストアウエアネス,そして2 つ目の視点はブレストアウエアネスを支える認識Awareness,理解Understanding,行動Action のサイクルを継続させるための仕組み,3 つ目の視点は検診の個別化,層別化である。 これらの視点のすべてで認識,知識,行動のサイクルが持続すること,広義のブレストアウエアネス(ピンクリボン運動)が,乳がんによる悲しみのない持続可能な未来への鍵となる。
  • 吉田 雅行
    2024 年 33 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
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    2016 年の国の指針改正で乳がん検診項目は問診とマンモグラフィとなり,2022 年の一部改正で自己触診に変わりブレスト・アウェアネス(乳房を意識する生活習慣)が盛り込まれ,有効な乳がん対策として期待されている。2023 年6 月の指針の一部改正では,「指導区分等に精検不要と区分された者について次回の検診の受診を勧めるとともに,日常の管理としてブレスト・アウェアネスに関する指導を行う。」とされ,「ブレスト・アウェアネス」が中心に据えられている。 「ブレスト・アウェアネス」は乳がんに対す「ヘルスリテラシー」,すなわち正しい受診行動を示すもので,症状があれば病院受診,なければ検診,検診で異常がない時は「ブレスト・アウェアネス」の継続が大切となる。 乳腺専門医の外来診療でも,視触診・マンモグラフィ・超音波検査で所見がなく,改めて本人の気になる部分のエコー走査で乳がんの診断に到ることがあり,受診者本人の感ずる変化「ブレスト・アウェアネス」の方が優れていると言っても過言ではない。 一方,日本乳癌学会の統計で乳がんの約半数が自己発見である。極端な論法ではあるが,腫瘤の自覚は一般的に1〜2cm の間とされ,リンパ節転移がなければ比較的早期(第1期)であり,ブレスト・アウェアネスの普及・啓発が進めば,死亡率低下が期待され,受診率が向上すれば更なる死亡率低下が期待される。従って,視触診に変わるブレスト・アウェアネスは効率的かつ効果的と言える。
第33回学術総会/シンポジウム3 乳がん検診における医療経済、費用対効果
  • 高橋 宏和
    2024 年 33 巻 2 号 p. 130-132
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
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    がん検診事業の評価において,長期的には死亡率減少をアウトカムとする一方,年度の評価においては指標を用いることが推奨されており,次年度によりよい検診を実施する体制がとられている。がん検診はアセスメント・マネジメント・受診率の3 つのステップを順に整えることが効果的だが,住民検診においてはそれぞれ実施状況調査,チェックリスト・プロセス指標,地域保健・健康増進事業報告が活用されており,モニタリングとフィードバックを実施することで質が担保されている。2023 年3 月に公表された第4期がん対策推進基本計画では,組織型検診の構築が挙げられており,住民検診だけではなく職域においても適切ながん検診の提供や事業評価の実施が望まれている。法的な根拠に乏しい職域検診においても,費用対効果も含めた道筋を示すことが,学会や関係機関には求められる。
  • 佐藤 章子, 鈴木 昭彦, 伊藤 正裕, 引地 理浩, 甘利 正和
    2024 年 33 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
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    乳がん検診は40 歳以上で2 年毎のMG 検診が一律に推奨されているが,高齢化率が加速している我が国において,層別化検診を模索する上で年齢要因は重要な検討事項である。75 歳以上の年齢階級では検診の要精査率は低く,PPV は高く,癌登録の実数データとの照合でも感度は保たれているが,乳癌死が全死因の3%未満と推定されることより検診での早期発見は死亡率減少に寄与しない可能性があり,過剰診断を回避するための検診年齢の上限設定や,個人差が大きい高齢者の治療強度判定のための指針設定が望まれる。一方,40-50 歳代の年齢階級では,要精査率は高く,PPV は低く,癌登録による実数データとの照合でも検診の感度が低い結果であったが,乳癌死が全死因の13% 以上と推定されることより,検診での早期発見が死亡率減少に寄与する可能性が高いためJ-START で検証中の新たなモダリティに期待したい。さらに40 歳未満では検診の有効性を示すエビデンスは存在しないため,厚労省の指針においても対象外であり,プロセス指標や費用対効果の面からも極めて非効率的である。しかし乳癌検診を「ブレスト・アウェアネス(breast awareness」啓発の機会として活用することで,40 歳代以降の高濃度乳房対策や,検診受診行動の改善に引き継がれることで受診率向上に繋げることができれば長期に渡る効果が期待できる可能性がある。
  • 大貫 幸二
    2024 年 33 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
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    40 歳代の日本人における乳がん検診の費用効果分析を最近のデータを用いて行い,2016 年に報告した成績と比較した。乳癌罹患率は上昇しているが薬物療法の進展により乳癌の予後が改善されており,乳がん検診の救命効果はやや低減していた。しかし,進行乳癌の初期治療費の高騰が大きく影響して,マンモグラフィ単独検診の1 救命人年あたりの費用は118 万円から94 万円とむしろ改善していた。超音波併用検診の1 救命人年あたりの費用は165 万円であり,以前と同様にマンモグラフィ単独検診よりも非効率的だった。進行乳癌の治療費高騰を検診による早期発見で相殺する局面は,持続可能な医療からはかけ離れる可能性がある。今後の研究や政策立案において,適切な経済評価が必要である。
第33回学術総会/要望演題1 US併用検診、してみてどうだった?
  • 阿部 聡子, 森久 保寛, 吉田 広美, 木下 綾菜, 徳原 純子, 大塚 好美, 黒川 徳子, 渡邉 朋子, 斉藤 シヅ子, 大久保 三紀 ...
    2024 年 33 巻 2 号 p. 142-147
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
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    マンモグラフィによる乳がん検診に超音波検査を併用した場合の効果を当施設の分離併用総合判定方式の実績から推定した。 マンモグラフィ・超音波検査分離併用総合判定は同時併用総合判定より精検不要にするための絞り込みが難しいとの意見もある。しかし,マンモグラフィ,超音波それぞれを過去画像と比較し,要精検候補を絞り込んだ上で,あらためて総合判定を実施することでプロセス指標の改善が見られた。 このことから,出張型対策検診でも精度管理をしっかり行うことで有益な乳がん検診を実施することが可能と考えられる。
  • −要精査症例の検討−
    田中 文恵, 吉田 誠, 高野 舞, 二口 希, 斎藤 望, 吉岡 千絵, 柑本 明美, 田賀 陽子, 平木 美和
    2024 年 33 巻 2 号 p. 148-150
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
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    当院での任意型乳がん検診に超音波(以下US)を併用するようになり8 年が経過したため,US 検診成績および要精査症例につき検討,報告した。 2015 年7 月から2023 年3 月までにのべ3613 名に実施し,乳がん検診受診者全体の26.4%を占めていた。平均年齢は45.7 歳(22―84 歳)で,40 歳未満は1233 例(34.1%),30 代と40 代で65.2%を占めていた。 US での要精査症例は116 例(要精検率:3.21%),精検受診者101 例(91%)であった。 要精査症例のうち結果の把握できている97 例中,針生検は44 例(45.4%)に実施し,うち乳癌は15 例,次いで線維腺腫:12 例,乳腺症:8 例,乳管内乳頭腫:3 例の順であった。 腫瘍径のわかる106 例中20mm 以下が95 例(89.6%)を占め,5mm 以下:5 例(4.7%)中乳癌1 例,5.1-10mm:47 例(44.3%)中乳癌6 例,10.1-20mm:43 例(40.6%)中乳癌5 例,20.1mm 以上:11例(10.4%)中乳癌3 例であった。 カテゴリーでは,C3:103 例中,針生検31 例中乳癌3 例,C4:11 例中,乳癌10 例。C5:2 例はすべて乳癌で,C4,5 は全例針生検を実施していた。 尚,US での発見癌数:15 例,がん発見率:0.41%,陽性反応的中度:12.9%であった。 今回の検討では40 歳以上のMG 併用がより有効であろうと示唆された。また,発見癌サイズは平均12.1mm 大であり,より小さなcT1 症例発見に寄与していると考えられた。ほとんどの症例が当院で精査され,スタッフがその精査に参加し,カンファランスでも見直していることから,結果のフィードバックができ,モチベーションアップにも有効に働いていると考えられた。
  • ―延べ74792人の検診成績を検討して―
    武部 晃司
    2024 年 33 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
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    当院ではJ-STARTに先駆け2005年から対策型検診において全例MMG/US同時併用検診を行ってきた。2005年~2022年の高松市対策型検診受診者は74792人であった。MMGを撮影後,USを併用した検診を行った。18年間全期間の要精検率は4.6%,発見率は0.83%, 陽性反応適中度(PPV)は20.3%であった。発見率は概ね変化せず,要精検率は年々低下しPPVは上昇した。発見癌を自覚の有無で2群に分けて比較検討した。USで多くの無自覚DCISを発見したが,この多くはlow grade であった。多くのDCISを早期に発見することは過剰診断の可能性もあり,検診受診者の乳癌死亡率低下に貢献しているかどうかは断定できない。有自覚の浸潤癌と無自覚の浸潤癌を比較するに,無自覚癌には有自覚癌と比し予後良好なluminal A typeが占める割合が高く,その他のtypeは低かった。リンパ節転移は無自覚癌で7.4%,有自覚癌で29.0%と明らかな差が認められた。さらには無自覚浸潤癌のうちUS描出優位例(MMG C1/2/3)では4.5%,MMG描出優位例(MMG C4/5)11.7%であり,有意にUS描出優位群にリンパ節転移率が少なかった。USの併用がリンパ節転移のない,予後良好な浸潤癌を発見することに貢献していた。MMG/US併用検診ではでPPVが低下するという欠点があるとされるが,当院の併用検診ではPPVは低下せず良好な検診精度であった。MMGに効率よくUSを併用することで,より予後の良い浸潤癌を発見した。当院の検診は受診者の乳癌死亡率の低下に貢献できる可能性があると判断している。
  • 松 敬文, 町田 英一郎, 喜島 博章, 宮本 耕次, 白尾 一定, 内野 竜次
    2024 年 33 巻 2 号 p. 156-158
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル 認証あり
    昨年までの本学会で,宮崎市の乳癌検診は視・触診+超音波(US)での検診を中心に行っており,検診受診率,癌発見率共に維持できたことを報告してきた。 今回,2022 年度の検診成績を検討した。また,US 主体だったころの検診成績とMMG 導入後の検診成績の変化を検討した。 宮崎市では,2008 年度から40 歳以上,5 歳間隔でマンモグラフィ(MMG)の追加が,希望者に対し行われてきた。その後,2016 年度から41 歳以上隔年でのMMG 検診が追加された。MMG 単独の検診は,2015 年度から「女性特有のがん対策」として,MMG のクーポン券による検診は41 歳のみ対象となった。今回,2015 年度~ 2022 年度の宮崎市での乳癌検診の結果を検討した。 2022 年度の受診者数は15,840 人,要精検率が2.4%,癌発見数は38 例で発見率は0.24% でいずれも例年通りであった。 MMG 検診導入前後での比較を行ったところ,要精検率は3.6% から3.1% へと低下し,精検受診率は72.0% から88.4% へと向上した。癌発見率は0.2% から0.3% へと若干上昇した。時代に伴う変化はあるかもしれないが,複数のモダリティを駆使することすなわち総合検診を行うことで検診成績は向上する可能性がある。
  • 森島 勇, 植野 映, 朝田 理央, 井口 研子, 伊藤 吾子, 梅本 剛, 太田代 紀子, 東野 英利子, 坂東 裕子, 平野 稔, 福田 ...
    2024 年 33 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル 認証あり
    茨城県総合健診協会では,乳がんの早期発見・早期治療を図ることを目的に策定された「茨城県乳がん検診実施指針」に準じた形で,茨城県内の36 市町村の対策型超音波検診を実施している。J-START の結果から超音波併用検診は発見率の増加,感度の上昇,中間期乳がんの減少の効果がわかっているものの,死亡率減少効果の確認や実施体制の構築にはまだまだ時間を要することから,全国的な導入にはまだ様々な課題がある。当協会で行っている超音波検診の成績と実際の施行体制,超音波検査技師の育成,精度管理としての症例検討会の内容などについて報告し,今後の期待と課題について述べる。本内容が,超音波検診導入に向けての参考材料になれば幸いである。
原著
  • ~ブレスト・アウェアネス普及を目指して~
    加藤 栄一
    2024 年 33 巻 2 号 p. 164-167
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル 認証あり
    緒言;30 代女性が,Ⅳ期乳がんと診断されたつらい経験をした。このためAYA世代女性からブレスト・アウェアネス(breast awareness : BA)を普及する必要性を痛感した。普及しやすいように,BA の効果を数値化しようと考えた。BA の乳房を意識する生活習慣による自己発見の効果として早期乳癌(0 期+Ⅰ期)は何%あると示せた方が,BA について説明がしやすく理解が得やすいと感じたからである。対象:2012 年から2016 年に日本乳癌学会に登録された全年齢の女性乳がん407,980 例である。方法:BA において乳がん検診以外で発見される乳がんを,乳房を意識する生活習慣による自覚あり乳がんとし,自己発見と検診(自覚症状あり)の合計として集計した。1)全乳がんの中での自覚あり乳がんの割合,2)現時点での全年齢層での自覚あり乳がんの早期乳癌の割合,3)現時点での全年齢層での自覚あり乳がんの腫瘤の大きさの割合,を算出した。これらの結果をBA の乳房を意識する生活習慣の効果として利用するものである。成績:自覚あり乳がんは,全乳がんの60.8%,自覚あり乳がんの中で早期乳癌は42.5%,2cm 以下は46.2% であった。結語:ブレスト・アウェアネスの普及に使える日本でのデータが得られた。
  • 足立 未央, 石場 俊之, 原 正武, 熊木 裕一, 小田 剛史, 有賀 智之
    2024 年 33 巻 2 号 p. 168-175
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル 認証あり
    【目的】本邦における対策型乳癌検診は,下限は 40 歳だが,上限は定められていない。高齢者の乳癌検診の予後改善効果は不明であり,諸外国では上限を定めている国もある。また,Volpara では数値による乳腺濃度測定が可能である。高齢者は若年者に比べ,マンモグラフィ(mammography; MG)における高濃度乳房が少ないとされているが,高齢者に限った Voloara の濃度の報告はない。そこで,高齢者乳癌の検診の状況と有用性,Volpara による高齢者の乳腺濃度を明らかにするために本研究を行った。 【方法】2019 年 1 月から 2020 年 3 月の間,当院で乳癌の治療方針の決定をした 65 歳以上の女性を対象とした。 【結果】対象患者は 224 人,初診時の年齢の中央値は 73 歳(範囲:65-94 歳)であった。発見契機は検診発見が 47 例(21%),自覚症状のみが 154 例(61%),他疾患経過観察中が23 例(10%)であった。MG を施行した 222 例中,MG で病変認識が可能なものは215 例 (96%)であった。転帰は 202 例(92%)が生存,15 例(7%)が経過観察中に死亡しており,10 例は原病死,5例は他因死(うち 4 例は他の癌による死亡)であった。無病生存期間(Disease-free survival; DFS)や全生存期間(Overall survival; OS)は検診発見群と自覚症状群で有意差は認めなかったが,検診発見群で根治不能症例は認めなかった。Volpara による解析では,140 例(62%)が高濃度乳房で,MG で病変の同定ができなかった 7 例中,6 例が高濃度乳房であった。 【考察】高齢者乳癌でも一定数検診発見があることがわかった。発見契機高齢者も乳癌検診を行うことで切除不能乳癌を減らせる機会があると思われた。また,高齢者の乳癌では大多数で MG のみでの発見が可能であった。 【結語】高齢者も乳癌検診を行うことで切除不能乳癌を減らせる機会があると思われた。高齢者の乳癌では大多数で MG のみでの発見が可能であったが,一部の高濃度乳房ではエコー( ultrasonograpy; US)など他のモダリティの必要性も示唆された。
  • 河内 伸江, 角田 博子, 八木下 和代, 松岡 由紀, 川久保 衣里子, 向井 理枝, 剱 さおり, 吉田 泰子, 中村 茉美花, 田中 ...
    2024 年 33 巻 2 号 p. 176-182
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル 認証あり
    【目的】超音波(US)よる乳房構成分類と,マンモグラフィ(MG)による分類とを比較し,その関連性を知る。【対象】MG とUS を同日に施行した連続する検診1047 例【方法】US では,乳腺領域内の皮下脂肪織と等エコーが占める割合により,P1:25%未満,P2:25 ~ 49%,P3:50 ~ 74%,P4:75%以上,F:脂肪の5 分類を行った。MG では,極めて高濃度,不均一高濃度,乳腺散在,脂肪性に分類し,高濃度乳房ではTäbar分類を用いた。【結果】P1 では,極めて高濃度2 例1.0%,不均一高濃度57 例29.5%,乳腺散在127 例66.8%,脂肪性7 例3.6%,P2 は40 例6.6%,260 例42.8%,304 例50.0%,4 例0.7%,P3 は18 例11.4%,68 例43.0%,72 例45.6%,0 例,P4 は8 例26.8%,12 例40.0%,10 例33.3%,0 例,F は2 例3.4%,2 例3.4%,29 例50.0%,25 例43.1%であった。Täbar 分類では,P1:パターンⅣ 29 例49.2%,パターンⅤ 13 例22.0%,P2:127 例42.3%,94 例31.3%,P3:11 例12.8%,53 例61.6%,P4:1 例5.0%,15 例75.0%であった。【考察・結語】US 分類とMG 分類には相関する傾向があった。US 上乳腺領域内の等エコーの割合が多い場合,MG では高濃度乳房で,間質優位の構成となる傾向が確認された。しかし,US とMG 分類には乖離もあり,ハイリスクとされる症例に相違があることもわかった。両方で検討することで,ハイリスク群の評価を,より高い精度で実現できる可能性が示された。
  • 甲斐 敏弘, 菅又 徳孝, 尾本 きよか, 齊藤 毅, 関根 理, 天野 定雄, 猪原 則行, 平方 智子, 二宮 淳
    2024 年 33 巻 2 号 p. 183-190
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
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    乳腺濃度(乳房構成)通知が、マンモグラフィ検診の正しい理解につながり、ブレスト・アウェアネスの意識を高めるのではないかと考え検討した。①乳がん検診受診者(自費検診A 群199 名、市民検診B 群841 名)のうち乳腺濃度通知希望者に対し濃度通知と動画(乳腺濃度、ブレスト・アウェアネス)による解説を行いアンケート調査した。②A 群164 名(82.4%)、B 群749 名(89.1%)が乳腺濃度通知を希望し、A 群113 名(乳腺濃度通知者の68.9%)、B 群322 名(実通知者の43.6%)から回答を得た。③乳腺濃度判定方法はA 群では『乳腺量測定ソフト』を利用し計測値(tcFG%)を表示した通知票を郵送した。B 群では目視判定した通知票を対面で説明した。④アンケートの結果、A 群の90%、B 群の80%が乳腺濃度判定通知票や解説動画の内容を「理解できた」と回答した。⑤ブレスト・アウェアネスについてはA 群98%、B 群93%が「習慣化したい」と回答し、セルフチェックの頻度に対する意識も有意に向上した。⑥ B 群では年齢とともに乳腺濃度通知票や動画の理解度がやや低く、ブレスト・アウェアネス習慣化の意識がやや低い傾向を認めた。⑦マンモグラフィ検診での乳腺濃度(乳房構成)通知は、検診の正しい理解と共にブレスト・アウェアネスに対する意識向上に寄与する可能性が示された。また、動画による解説は多くの受診者に受け入れられたが、対策型検診での高齢者などには一定の配慮が必要と思われた。
  • 加治 つくし, 佐藤 馨, 古田 昭彦, 木村 薫, 鈴木 瞳
    2024 年 33 巻 2 号 p. 191-195
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
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    我が国での対策型乳癌検診でマンモグラフィ(MG)が導入され20 年以上が経過 しようとしている。より精度の高い対策型乳癌検診を実施するため、経済性や安全性を考慮した新規モダリティの追加が模索されている。約7 万人の日本人女性を対象とした大規模なランダム化比較試験(Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial; J-START)の結果では、40 歳代における超音波検査(US)併用の有用性が検証され、癌発見率の上昇が示されたが、同時に要精査率の上昇も認められた。石巻市では、平成28 年度から新方式を導入した。視触診を廃止し、条件付きUS 併用MG 検診と総合判定(一施設同時併用方式)の導入を始めた。旧方式最終2 カ年では12510 人(MG 単独10179 人、US 単独2331 人)、新方式導入後5 年では34102 人(MG 単独17727 人、MG + US 併用8041 人、US 単独:8339 人)が受診した。新方式導入後の要精査率・癌発見率・陽性反応適中度の推移を検討したので報告する。
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