日本乳癌検診学会誌
Online ISSN : 1882-6873
Print ISSN : 0918-0729
ISSN-L : 0918-0729
原著
乳がん超音波検診における要精査基準の検証
鈴木 咲子 角田 博子森下 恵美子福澤 晶子佐藤 博子三輪 京子田村 史子沼倉 恵美
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 25 巻 1 号 p. 61-68

詳細
抄録

2014年5月に日本乳腺甲状腺超音波医学会により乳房超音波診断ガイドライン第3版が発行され,乳房超音波検診における要精査基準にいくつかの改訂がなされた。腫瘤および非腫瘤性病変について所見別の妥当性の検証を目的とした。対象は2011年1月から6月に超音波検診にて何らかの所見があった受診者のうち,要精査となり組織学的結果が判明した64名65所見,および2011年に精査要・不要に関わらず2013年に再度受診した1,663名6,629所見,合計1,727名6,694所見とした。対象を所見別にretrospective に検討し,約2年の経過を追いがん発見率,PPV を算出した。カテゴリー3以上とする所見から21例,カテゴリー2とする所見から5例,合計26例の癌が検出された。線維腺腫や濃縮嚢胞を示す所見,また最大径と縦横比で判定する範疇で5mm 以下の腫瘤,多発小嚢胞,局所性・区域性の内部エコーを伴う乳管拡張,構築の乱れから乳癌は検出されなかった。境界部高エコー像や境界線の断裂を伴う病変はがん発見率・PPV がともに75.0%であった。PPVは全体で16.4%と比較的高い結果であった。嚢胞性パターンやカテゴリー2と判定した境界不明瞭な低エコー域などから5例の乳癌が検出されたものの,頻度や受診歴を考慮した結果,許容範囲ではないかと考えられ,また生命予後に関わる乳癌の見落としも避けられていることが示された。

著者関連情報
前の記事 次の記事
feedback
Top