2018 年 27 巻 2 号 p. 131-134
がん・生殖に関わる診療ガイドラインの認知が向上し,乳癌患者の診療の現場で,将来の妊娠・出産の可能性を話し合われるようになってきた。がん薬物療法前の妊孕性温存に焦点をあたりがちであるが,最も大切なのは,患者が,自分のおかれた状況をふまえ,自分にとって納得のいく選択ができることであり,選択そのものよりもプロセスとしての継続的な支援が重要である。本稿では,がん専門病院と院外の医療機関とのがん・生殖連携システムを構築した自身の体験をふまえて,乳癌患者の妊孕性に関する支援のあり方について論じる。がん治療医,生殖医療医だけでなく,多領域,多職種の連携と対話を促進することが,よりよい支援につながると考えられ,施設内だけでなく地域でのネットワークを育てることが求められている。