日本乳癌検診学会誌
Online ISSN : 1882-6873
Print ISSN : 0918-0729
ISSN-L : 0918-0729
乳房撮影と視・触診を用いる乳癌検診の費用効果分析
飯沼 武松本 徹木戸 長一郎
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 4 巻 1 号 p. 49-57

詳細
抄録

筆者らは前報において日本の乳癌検診に乳房撮影を導入する場合の被曝によるリスクと検診から生ずる利益との比較を行い, 30歳以上で問題がないことを明らかにした。今回は乳房撮影を用いる検診の評価の第2ステップとして, この新しい検診がどの位の費用効果で実施できるかを検討する。費用効果のモデルは筆者らが開発した方法を用いる。その前提条件は或る集団全員が毎年検診を受診しており, その1回当りの費用と効果を求めるものである。まず効果としては集団全員が乳房撮影と視触診によるスクリーニング検査を受け, 要精検とされた者が精密検査を受診, 最終的に乳癌と確定した者が治療され, 一部が生存するという流れを想定した。ただし, スクリーニング検査での見逃し, 精検不受診者からの癌の発生も考慮した。一方, コストはスクリーニング検査と精密検査のコストおよび治療を受けた者の費用も含めた。
最終的な結果は救命人・年当りの費用という形で費用効果比を算出し, 年齢階級の関数として表した。費用効果比は45歳~49歳代で最も安く250万円/人・年となった。その前後の年齢ではいずれも増加した。ただし, この値は他の胃癌や大腸癌に比して約3倍高かった。すなわち乳癌検診は費用効果的には割高であることが明らかとなった。しかし, これでも現行の視触診による検診に比べると良いことも判明した。今後さらに精度のよい数値データの推定が急務である。

著者関連情報
© 日本乳癌検診学会
前の記事 次の記事
feedback
Top