抄録
本稿では,期間衡平性の測定にあたり,固定資産に求められるべき会計処理が必ずしも明らかではないという問題意識のもと,ドイツの公会計学説である Johns 学説と Lüder 学説における固定資産の会計処理に着目して,期間衡平性の測定構造を検討している。
検討の結果,次のことが明らかとなった。Johns 学説の前提には消費経済主体観という政府観が存在しており,それに依拠して資金が測定対象とされ,「財政の健全性」という観点からみる期間衡平性を測定するために,自己資金の減少に基づく財政償却という固有の会計処理が固定資産に求められていた。一方,Lüder 学説の前提には生産経済主体観という政府観が存在しており,それに依拠して資源が測定対象とされ,「サービス提供能力の維持」という観点からみる期間衡平性を測定するために,正味資源の減少に基づく減価償却が固定資産に求められていた。このように,期間衡平性といっても,それが依拠する政府観に従って,その意味内容は全く異なってくることが明らかとなった。