本稿では,収益認識モデルを,会計利益観(収益費用観・資産負債観)と会計の体系(歴史的原価会計・公正価値会計)の組み合わせにより3つの理念的類型に分類する。そのうえで,IFRS15「顧客との契約から生じる収益」,及び企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」が,資産負債観と歴史的原価会計を組み合わせた新たな収益認識モデルでありながら,収益費用観や歴史的原価会計を基礎とした伝統的な収益認識モデルと親和的であることを明らかにする。 本稿の検討を通じて,2002年に発足したFASBとIASBの「収益認識プロジェクト」において当初から志向されてきた収益認識モデルが,2008年の世界金融危機を契機として変容を遂げたことを指摘する。また,欧米諸国及び日本で長らく会計実務を支えてきた,実現主義や歴史的原価会計に基づく収益認識モデルの重要性が再認識される。