簿記研究
Online ISSN : 2434-1193
複式簿記のコントロール機能の教育に向けて
─取引損益と商品販売事業戦略の意思決定─
松下 真也
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 5 巻 2 号 p. 1-8

詳細
抄録

本論文では,不確実性が増大するポストコロナ時代において重視される簿記のコントロール機能について教育への導入可能性を検討するという問題意識のもと,複式簿記と商品販売事業戦略の意思決定との関係を主張した Basu and Waymire(2020)を分析した。分析の結果,複式簿記によって把握される取引損益情報は,商品販売事業戦略の意思決定のスピードと質を向上させる意義が認められるものの,当該意思決定のスピードと質は,単式簿記(補助簿)を包含する複式簿記を利用することで,より一層促進されることが明らかとなった。これらのことから,ポストコロナ時代に,不確実性に対処するための商品販売事業戦略の意思決定の改善という簿記のコントロール機能の教育に向けて,取引損益の早期把握を可能にする売上原価対立法と購買市場および販売市場における需給バランスの変化の早期察知とその原因分析を可能にする帳簿組織の教育を導入すべきであると結論付けた。

著者関連情報
2022 日本簿記学会
前の記事 次の記事
feedback
Top