日本結晶成長学会誌
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細胞増殖因子の徐放による骨再生と結晶学的アプローチによる評価(<小特集>生体・医療材料)
田畑 泰彦山本 雅哉中野 貴由馬越 佑吉
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2004 年 31 巻 2 号 p. 59-68

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抄録

生体骨は,体液内のカルシウム代謝機能を制御するとともに,自重支持や,臓器の保護といった構造材料としての重要な役割を果たす.こうした骨組織が,骨折,腫瘍の切除,開頭術などの手術侵襲によって欠損し,もとの機能を失うことは少なくない.その解決策として現在注目されているのが,骨組織の再生医療である.これまでに,骨形成因子(BMP)をはじめとする細胞増殖因子や間葉系幹細胞を用いて,骨の再生が試みられてきた.本稿の前半部では,細胞増殖因子,あるいは遺伝子を用いた骨再生について,最近の我々のグループにおける徐放化技術の知見を交えながら概説する.一方で,最先端の骨再生法を医療現場で実際に適用・発展させていくためには,骨組織の再生過程をより深く理解する必要がある.さらに再生組織の機能・組織が元通りへと実際に回復しているかを評価し,その安全性・信頼性を高めることが不可欠である.ただし,現状では,硬組織の組織や機能の評価は,主要構成成分である生体アパタイトの密度(骨密度,骨量)を測定するにとどまっており,新しい医療法が次々と生み出されていく中にあって,必ずしも十分であるとはいえない.そこで後半部では,再生硬組織の新たな評価法として,アパタイトがイオン性の結晶であり,六方晶をベースとする異方性の高い構造を持つことに注目した結晶学的なアプローチについて紹介する.

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© 2004 日本結晶成長学会
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