2011 年 38 巻 3 号 p. 177-182
タンパクの光化学反応をきっかけとして結晶成長が始まる.光化学反応によりTrp残基あるいはTyr残基がラジカル化した反応中間体が生成する.この中間体は他のタンパクと衝突してタンパクのダイマーを生成し,このダイマーが成長して臨界半径を超えて結晶核となる.しかし,全てのダイマーが核に成長するわけではない.核に成長できるダイマーは結晶中で隣り合う二つの分子と同じ配置をしていることが必要と思われる.このような構造の分子をテンプレート分子と呼ぶことにする.リゾチームの場合53番目のTyr残基同士で結合したダイマーがテンプレート分子であると考えられた.このとき生成するダイマーの全てが必ずしもテンプレート分子となるわけではないこともわかってきた.このことから,テンプレート分子を生成させるための戦略を検討した.