抄録
湿潤空気に紫外光を照射すると水滴または水のエアロゾルが生成する.実験室反応容器に200ナノメートル近傍の紫外線を照射し,生成する水粒子を光散乱法と質量分析法によって観測した.紫外光によって酸素分子の光分解反応が起こり,その後いくつかの反応が連鎖して,最終生成物の過酸化水素に至る.この分子の蒸気圧は水より極めて低いので,水分凝集の核になると考えられる.光反応の主要中間体HO_2ラジカルとオゾンを定量的に検出した.気相反応のシミュレーションから得られるこのラジカル濃度と中間体濃度が実験結果とよく一致し,反応機構の全容を明らかにした.また,水粒子形成の熱力学的な考察を行い,この系では小さな過飽和状態があれば粒子成長が可能であることを示した.