2013 年 39 巻 4 号 p. 196-203
物理気相成長法であるレーザアブレーション(PLD)法と同軸型アークプラズマ(CAPD)法による超ナノ微結晶ダイヤモンド(UNCD)の生成機構を総説する.両作製法によるUNCD結晶の成長は,ダイヤモンドパウダーを用いた基板のシーディング前処理が不要であり,化学気相成長法での成長とは明らかに異なる.膜堆積時のプラズマのin-situ発光分光観測とシンクロトロン光を用いた構造評価の結果を基にUNCDの成長機構に関して,1)高エネルギーC^+イオン粒子による過飽和状態の持続が結晶核の生成に寄与している可能性が高いこと,2)成長初期段階の結晶が,その表面のダングリングボンドが水素原子により終端されることで安定化し,かつその成長が助長されると考えられること,3)ホウ素ドープによる明白な結晶粒径増大効果を実験的に確認し,それがダイヤモンドの気相成長で知られる欠陥誘起成長モデルにより定性的にうまく説明できること,を明らかにした.