日本応用動物昆虫学会誌
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ニカメイガ幼虫の生育に及ぼす飼料中の蛋白質ならびに炭水化物含量の影響
石井 象二郎平野 千里
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1957 年 1 巻 2 号 p. 75-79

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抄録

ニカメイガ幼虫の生育に必要なビタミン、アミノ酸および炭水化物についてはすでに報告してきたが、その量的要求については現在までほとんど明らかにされていない。しかし野外で稲茎を食害している幼虫の栄養を解析するためには、量的要求の決定が必要な課題であると考えられる。筆者らは炭水化物と蛋白質の含量をいろいろに変えた合成飼料で幼虫を無菌的に飼育し、一、二興味ある結果を得たので報告する。実験に用いた基礎飼料は第1表に示した通りである。これに第2表の処方に従ってブドウ糖(炭水化物源)とカゼイン(蛋白質源)を加えて飼料とした。飼育実験の結果を第3表および第1図に示した。炭水化物、蛋白質のいずれか一方でも全く欠けている飼料では、幼虫は生育できない。炭水化物、蛋白質の両方が加えられている飼料では、蛋白質が炭水化物と等量又はそれ以上存在すると幼虫の生育は良好であるが、蛋白質が炭水化物より少なくなると生育は急激に低下する。本実験で使用した飼料では、その炭水化物および蛋白質の最適含量は、それぞれ15〜40%、40〜60%の範囲にあると考えられる。各飼料(A、Iを除く)で生育した幼虫体について水分、全窒素および粗脂肪の含量を測定した結果、各成分は飼料の炭水化物ならびに蛋白質の含有量の変化に伴って著しく変化することがわかった。水分および全窒素含量は飼料中の蛋白質の増加と平行して増加し、粗脂肪含量は飼料中の炭水化物量に伴って増減する(第2図)。また幼虫体の粗脂肪含量と粗蛋白質含量、(全窒素×6.25)の和は第4表に示したように、全飼料を通じて大体一定した値、すなわち幼虫の乾燥体重の約80%を保った。このことから飼料中の炭水化物、蛋白質の量的変化に伴う幼虫体内の固形物成分の変動は、大部分脂肪と窒素化合物の量的変化によるものであり、他の成分は常にほぼ一定した含量を維持しているものと考えられる。

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© 1957 日本応用動物昆虫学会
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