日本応用動物昆虫学会誌
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原著
琉球諸島におけるタバココナジラミバイオタイプの地理的分布と寄主作物
貴島 圭介上田 重文大野 豪喜久村 智子上宮 健吉大石 毅太郎良 和彦谷口 昌弘坂神 たかね安藤 緑樹二神 和靖上里 卓己兒玉 博聖
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2011 年 55 巻 1 号 p. 9-17

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抄録

琉球諸島のほぼ全域にわたり,栽培作物に寄生するタバココナジラミのバイオタイプを,2005年から2009年にかけて調べた.施設栽培95地点と露地栽培55地点において調査した結果,B,QおよびNauruが確認され,琉球諸島におけるQの存在が初めて明らかとなった.Bは,調査した施設栽培の全てと露地栽培34地点で確認された.Qは,施設栽培2地点でのみ確認され,露地栽培においては確認されなかった.Nauruは,施設栽培においては2地点でのみ確認されたが,露地栽培においては28地点で確認された.すなわち,施設栽培作物においてはBが圧倒的に優占していたが,露地栽培作物においては,Nauruの発見頻度はBのそれと比べ低くはなかった.BとNauruは琉球諸島全域に生息していたが,Qは沖縄島の施設栽培ピーマンCapsicum annuum L. var. grossumでのみ確認された.それぞれのバイオタイプの寄主植物について,BはバレイショSolanum tuberosum L.を除く全ての作物種(12科27種)に幼虫が寄生していたが,Nauruは寄生範囲が狭く(4科6種),その中ではサツマイモIpomoea batatas(L.)Poir.から採集された割合が高かった.栽培環境や寄主作物によるバイオタイプ構成の違いは,それぞれのバイオタイプの寄主選好性や薬剤感受性などの生態的特徴の違いを反映していると考えられる.

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© 2011 日本応用動物昆虫学会
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