2011 年 55 巻 3 号 p. 155-161
日本で分布拡大中のチャ系統ミカントゲコナジラミへの対策を講ずるにあたり,明治時代からカンキツの害虫になっているカンキツ系統ミカントゲコナジラミとの系統的な関係性を調べることは急務である.日本各地から採取したミカントゲコナジラミのmtCOI遺伝子を調べたところ,チャ系統とカンキツ系統は異なる塩基配列を持つことが判明した.また今回解析したサンプルでは,両者とも系統内の変異はなく,両者の塩基相同率は,比較可能な674塩基で78.0%と低かった.これらのことから,両者は遺伝的に交流がない独立した系統であると考えられる.ヒサカキ,サザンカ,サンショウ,シキミ寄生性の個体は全てチャ系統,ナンテンカズラ寄生性の個体は全てカンキツ系統であった.また両系統は,mtCOI遺伝子を系統特異的に増幅するプライマーを使ったPCR産物の有無で判別することが可能である.