日本応用動物昆虫学会誌
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稲作害虫に対する殺虫剤散布必要度合の予想方法に関する研究
第3報 ニカメイチュウ防除の殺虫剤散布必要度合の予想
小林 尚野口 義弘錦野 正臣須藤 真平池本 五郎長江 十一
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1971 年 15 巻 3 号 p. 121-131

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抄録

徳島県下の主要稲作地帯である徳島市,小松島市,板野郡,麻植郡および美馬郡下で,1954∼1957年に,ニカメイチュウ防除を,第1世代にエチルパラチオン乳剤0.02%液90l/10a1回散布,同第2世代に同剤0.04%液180l/10a1回または2回散布の組み合わせで行ない,防除効果と本種被害茎率との関係を解析し,次の結果を得た。
1) 無防除区のニカメイチュウ被害茎率は,第1世代防除期,同世代末期および第2世代末期に,それぞれ6.53±3.43% (2Sx), 2.16±1.19%および2.76±1.93%であり,当時の徳島県下の多くの水田は防除効果が現われるか否かの臨界域上にあったと考えられた。
2) 防除によってイネが増収したと考えられる8例と増収の形跡がみとめられなかった5例について,無防除区の被害茎率の推移を比較すると,前者の第1世代防除期,同世代末期および第2世代末期のそれは,それぞれ10.28±4.74%(2Sx),3.48±1.07%および3.25±2.33%であり,後者のそれはそれぞれ2.78±1.51%,1.08±1.01%および2.08±2.24%であった。
3) 上記防除で経済効果が現われるか否かの臨界被害茎率は,上記結果に被害茎率による減収量査定式および米価をあてはめた計算から,第1世代末期および第2世代末期に,それぞれ2%内外および3%内外であろうと推定された。
4) 1回の防除で被害茎率を約80%低下させうる程度の殺虫剤を散布する場合,ニカメイチュウ防除の要否は次の基準によって防除前に判断することができると考えられた。

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