日本応用動物昆虫学会誌
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タマナヤガ,ヨトウガ,ハスモンヨトウの幼虫の行動と地表面施用の食毒剤の効力に関する実験
横井 進二小美野 禎司辻 英明
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1975 年 19 巻 1 号 p. 11-16

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抄録

ほ場での食毒剤の地表面散布を想定して,土(バーミュキュライト)を入れたシャーレ内に食草(ハクサイ葉片)と幼虫を入れ,その土の上にトリクロルフォン(有機リン酸エステル殺虫剤)を含有する食毒剤を(模擬的に)施用すると,ヨトウムシ類3種幼虫に対する防除効果が示された。その有効順位は若令∼中令期で,タマナヤガ>ハスモンヨトウ>ヨトウガ,老令期では,タマナヤガ=ハスモンヨトウ>ヨトウガであった。
ほ場作物に対する殺虫剤の葉面散布を想定してトリクロルフォンまたはイソキサチオン乳剤希釈液にハクサイ葉片を浸漬し,風乾後幼虫を放つと両殺虫剤は,3種幼虫に高い食毒効果を示した。しかしこれら殺虫剤に対する3種幼虫の感受性の高さはタマナヤガ=ヨトウガ>ハスモンヨトウの順で,前記の食毒剤の模擬的な地表面施用の効力順位とは一致しなかった。当然,3種幼虫の行動の差が問題となる。前報(小美野ら,1973)で示された潜土性を示すようになるステージ(若さ)の順位,タマナヤガ>ヨトウガ>ハスモンヨトウも完全には一致しないが,タマナヤガに対する効力には関係があるとみられる。
前記食毒剤から殺虫成分を除去して与え,ハクサイまたはギシギシの葉片を併置して,3種幼虫による摂食量をみると,食毒剤に対する選好性は,ハスモンヨトウ≥タマナヤガ>ヨトウガの順であった。これは前記の模擬施用の効力順位と完全には一致しないが,ヨトウガ幼虫に対する効力との関係をうかがわせるものである。
一方,容器内に2個の葉片を離して置き,一方の葉片のみに幼虫を静止させると,元の葉片からの離れやすさは,タマナヤガ>ハスモンヨトウ≥ヨトウガの順位で,前記食毒剤の効力順位と関係が大きいと思われた。また,別の葉片に移る傾向はヨトウガ幼虫では極めて少なく,タマナヤガやハスモンヨトウでは移動がみられ,それは幼虫の密度に依存的であった。しかし前もって高密度飼育されたものでも,葉片に1頭のみつけられた実験では移動が起こり難く,1頭飼育されたものでも5頭で実験した場合,移動が起こりやすかった。従ってこの移動の主な原因は,それ以前の飼育密度よりも,その時点における他個体の存在によるものであると考えられる。

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