抄録
ハスモンヨトウの交尾時における精胞の授受は,まず10分後における挿入器からの分泌物の分泌にはじまり,40分後頃からの精胞本体の侵入開始と精子の注入がこれにつづき,70分後頃には柄部末端を残して精胞はほとんど完成するが,それの交尾のう内への完全な送りこみはそれより若干後に起る,という経過をたどった。
予察灯で誘殺された雌の中には1回以上5回までの交尾をくり返しているものが認められ,交尾のう内に発見された平均精胞数は1.7個であった。
多数回交尾をしている雌の交尾のう内に存在する精胞は,先に入った精胞ほど柄部が強く湾曲し,先端開口部が輸精管入口より遠くはずれ,後から入ってくる精胞が正常な位置に定着できるような状態を作り出しており,複数回の交尾によってもたらされる精子が有効に利用されるような機構の存在が示唆された。