昆虫背脈管における脈動を,弾性論的に考察を加え,その伝ぱの様相をFRANKの用いた解析法に模して図化し,さらにその伝ぱ速度などを測定した。すなわち,背脈管における収縮・拡張活動は,全体として同時に生起するものではなく,正脈の場合,背脈管後端部が収縮し,やがて拡張するが,その収縮にややおくれて前節が収縮をはじめ,そして拡張するといったふうに次第に前方へ伝ぱされていく。また,心臓部においては拡張期が収縮期にくらべて長く,大動脈部ではその逆となる。脈動の伝ぱ速度は1.2∼7.6cm/secであったが,幼虫のそれは蛹・成虫よりいずれも速やかであり,同一個体にあっては,正脈の脈動の伝ぱ速度は逆脈にくらべて速やかである。さらに,同一個体におけるはく動数の多少は,主として拡張休止期の長短によって左右され,はく動数が増加すれば休止期が消失することを知った。