日本応用動物昆虫学会誌
Online ISSN : 1347-6068
Print ISSN : 0021-4914
ISSN-L : 0021-4914
モモハモグリガの生態学的研究
II 光周反応に支配された成虫の季節型
成瀬 博行
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 25 巻 3 号 p. 162-169

詳細
抄録

光周反応によるモモハモグリガ成虫の季節型発現機構を調査した。
ほ場では夏型成虫は春から夏に発生し,10月から後には認めなかった。一方秋型は9月下旬∼10月上旬以降に現われた。本種の季節型は光周期に支配されて発現し,夏型は成熟卵を持つ非休眠成虫,秋型と中間型は卵巣が未熟な休眠成虫であった。秋型は夏型より成虫に至るまでの発育日数が長く,その差は主に蛹期に生じたものであった。成虫のサイズは季節型による明らかな差を認めなかったが,頭幅に対する相対的な前翅長は明らかに秋型が長かった。季節型を決定する光周期感受ステージは幼虫期とみられるが,休眠成虫となるためには1,2齢幼虫期から短日で経過する必要があった。
日長と休眠成虫率との関係から,本種の臨界日長は20°Cで約13時間,25°Cで約12,5時間と推定された。これらの結果をもとに富山県における光温図表を作製し,季節型が本種の生活史にはたす役割を考察した。

著者関連情報
© 日本応用動物昆虫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top