日本応用動物昆虫学会誌
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モモノゴマダラノメイガ2系間の生殖隔離
昆野 安彦本田 洋松本 義明
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1981 年 25 巻 4 号 p. 253-258

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抄録

モモノゴマダラノメイガの2系,果実系とマツ科系との間の生殖隔離について室内実験を行った。
1) コーリングは果実系では,羽化の翌日の夜,1日齢から2日齢にかけてコーリング個体数が増加し,3日齢から10日齢の間は,消灯後6.5時間乃至7.5時間に80%以上の個体にコーリングが起こりピークが認められたのに対し,マツ科系ではコーリング個体が前者に比べ,はるかに少なく,特別なピークも認められなかった。
2) 交尾については,両系とも1日齢から行われるようになり,果実系では2∼3日齢に集中し,マツ科系では2日齢に集中していた。またマツ科系の方が果実系よりも交尾のピークが平均1.5時間早く出現した。
3) 両系の処女雌を誘引源としたトラップへの各系の雄の誘引飛来を調べたところ,雄は同系の雌にはもちろん,他系の雌にもよく誘引され,両系の処女雌のフェロモンの構成成分には共通な部分があると考えられた。
4) しかし,同一のケージに両系の雌雄を収容して,交尾させたところ,両系とも正確に各系の配偶者と交尾し,互いに正しい配偶者を識別する何らかの機構があると考えられた。またこの場合,交尾のピークは一方の系だけのときに比べ,両系とも1.5時間(マツ科系),2時間(果実系)おくれた。
5) 以上の実験観察から,モモノゴマダラノメイが果実系,マツ科系には明瞭な生殖隔離機構が存在すると結論された。

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