日本応用動物昆虫学会誌
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高田地方におけるイネカラバエ夏世代幼虫の生育生態
II. 生育段階の異なる稲における第2化期幼虫の生育および1, 2化期幼虫期間の差
岩田 俊一
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1959 年 3 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

1) 同じ程度の若稲を使って第1化期および第2化期における幼虫の生育の速さを比較したところ,第2化期は第1化期より遅かった。
2) 第2化期においては幼虫の初期生育は寄主稲の幼穂の伸長時期と密接な関係がある。したがって幼虫の生育経過は相異なる出穂期の稲ではそれぞれ異なる。
3) 蛹化および成虫羽化時期も寄主稲の出穂期の早晩に伴って変動するが,出穂から蛹化までの期間は出穂期が遅くなるにつれて短くなる。
4) 早生品種農林1号では出穂の8日後にすでにかなりの蛹化個体が見られたのに,その後蛹化率は高くならず,中生品種における蛹化開始と同時に再び蛹化率が高くなった。このことから早生品種における蛹化抑制的現象の存在を推定した。
5) 同一品種の播種期を移動した場合,それらの稲における第2化期幼虫の生育は播種期のおくれるほど遅れた。しかるに播種の最も遅い若稲では幼穂を食べずに終令期まで発育を遂げた。このことから稲のある生育段階では幼虫の生育が遅延するらしいことを推定した。
6) 上記のように第2化期には初期幼虫の発育遅延現象および老熟幼虫の蛹化抑制的現象のあることが,野外において一般に第2化期のほうが第1化期より長い発育期間を要することの主な理由であろうと考察した。

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