1987 年 31 巻 3 号 p. 213-219
長野県伊那地方に分布するオオニジュウヤホシテントウ群のうち,野生植物を寄主として生育を完了している3種の個体群に,本来の寄主植物と栽培植物のジャガイモを別々にあたえて飼育し,産卵雌率,1雌あたり産卵数,卵塊サイズ,産卵前期間,産卵期間,卵から羽化までの生存率,幼虫・蛹期の発育日数,および世代あたり増殖率を比較した。
ハシリドコロを寄主とするオオニジュウヤホシテントウをジャガイモで飼育すると,ハシリドコロにくらべ,世代あたり増殖率は約6倍に増加した。これはおもに1雌あたり産卵数の増加によるものであった。ふ化率の増加,産卵期間の延長,幼虫発育期間の短縮もみられ,成虫・幼虫期を通して,ジャガイモに対し高い受容性をしめした。
アザミを寄主とするヤマトアザミテントウをジャガイモで飼育すると,アザミにくらべ,世代あたり増殖率は約6分の1に減少した。これは1雌あたり産卵数の減少と幼虫期生存率の低下によるものであった。幼虫発育期間も長くなり,成虫・幼虫期を通して,ジャガイモに対する受容性は低かった。
ルイヨウボタンとハシリドコロを寄主とするルイヨウマダラテントウをジャガイモで飼育すると,2種の野生植物にくらべ,世代あたり増殖率は約2倍に増加した。これはおもに1雌あたり産卵数の増加によるものであった。幼虫から羽化までの生存率の差は小さく,産卵に関してのみ,ジャガイモに対し高い受容性をしめした。