高冷地の長野県木曽郡開田村(標高1,150m)で,積雪・凍結条件下におけるイネミズゾウムシの越冬生態を調査した。越冬世代成虫の大部分は地表下5cmまでに生息していた。表層土中の越冬世代成虫の垂直分布は標高1,150mと420mで差がなかった。
開田村では厳冬期に積雪下の表層土は凍結する。この凍結した表層土から多数の越冬世代成虫の生存個体が発見された。開田村の水田畦畔へ放飼した越冬世代成虫の生存率は64%と90%であった。開田村における1月から3月の最低気温の極値は-19°Cに低下し,積雪下の地表面の最低温度は-2°C前後であったが,高冷地の越冬場所の凍結や積雪条件は,本種の越冬個体の死亡要因にならないと考えられた。