日本応用動物昆虫学会誌
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昆虫寄生性線虫Steinernema kushidai MAMIYAのドウガネブイブイに対する殺虫性
藤家 梓横山 とも子藤方 正浩澤田 正明長谷川 誠
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1993 年 37 巻 2 号 p. 53-60

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抄録

畑作物(落花生,サツマイモ等)や芝草の大害虫であるドウガネブイブイに対するS. kushidaiの殺虫性と増殖力,感染態幼虫(JIII)の水中・土壌中での生存および生存に及ぼす化学農薬・太陽光・Metarhizium anisopliaeの影響を調査した。JIIIは,ドウガネブイブイの1, 2齢幼虫より3齢幼虫に高い殺虫性を示した。ドウガネブイブイの3齢幼虫体内でS. kushidaiはよく増殖し,幼虫1頭あたり平均で29,890頭のJIIIが分離された。JIIIの増殖数は,幼虫の体重が重いほど多かった。懸濁液中でのJIIIの生存率は15°Cで最も高く,3か月後でも50%以上であった。しかし,4, 10, 20,および25°Cでは1か月後に生存率は50%以下になり,4°Cでは10%以下となった。JIIIを接種して15°Cで保存した土壌中では3齢幼虫に対するJIIIの殺虫性が6か月間高く保たれた。JIIIを接種した野外の落化生圃場でも高い殺虫性が8か月間保たれたが,冬を越すと殺虫性は低下した。殺虫剤(ダイアジノン,MPP)はJIIIの生存率を著しく減少させたが,殺菌剤(チオファネートメチル)や除草剤(CAT,グリホサート)のJIIIへの影響は小さかった。JIIIを太陽光へ20分以上暴露すると,生存率は低下した。M. anisopliaeは,JIIIの生存率へ影響を与えなかった。

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