日本応用動物昆虫学会誌
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クロゲハナアザミウマ雌における翅型および生殖休眠の光周期と温度による制御
中尾 史郎
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1994 年 38 巻 3 号 p. 183-189

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抄録

クロゲハナアザミウマ雌がどの発育段階に翅型決定要因としての光周期を感受しているかを明らかにするため,また,本種雌が光周期と温度に依存した生殖休眠性を有することを確認し,その感受期を明らかにするために,本種雌を発育段階および日齢ごとに,25°Cと18°Cならびに長日(15L:9D)と短日(10L:14D)とを組み合わせた温度・光周条件で飼育して,翅型と産卵前期間を調査した。
1) 本種雌が翅型決定要因として光周期を感受する発育段階は卵期と幼虫期であると考えられた。短翅型の誘導には少なくても1日齢幼虫期の短日経験が不可欠であった。孵化直前の卵期から8日齢幼虫期までの間に長日経験のある雌では,短翅型の誘導が一部または完全に抑制された。これらのことから,光周感受期前期を短日条件で発育した雌はその後の光周条件によってどの翅型にもなり得るが,感受期前期を長日条件で発育した雌はその後の光周条件によって長翅型か中間型になると推察された。
2) 短日は本種雌の生殖休眠を誘導し,高温はこれを抑制した。本種雌は,少なくても,卵期と幼虫期に休眠誘導要因としての光周期を感受すると考えられた。このうち,生殖休眠誘導要因としての光周期に対する感受性は,卵期から幼虫初期に比較的高いと推察された。
3) どの翅型の雌にも休眠個体と非休眠個体が出現したが,長翅型および中間型雌と比較して,短翅型雌には高い割合で生殖休眠が誘導される傾向があったことから,短翅化と休眠誘導は生理的学的に密接な関係にあると推察された。

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