抄録
茨城県南部で採集し人工飼料で累代飼育しているエビガラスズメについて,蛹休眠の誘導条件と休眠蛹の長期保存法を検討した。23°Cにおける休眠誘導の日長反応は釣鐘型の変化を示し,4L-20D∼12L-12Dの範囲で全個体が休眠し,臨界日長は1.6時間および13.4時間であった。27°Cではいずれの日長でも休眠率は6%未満であった。12L-12Dにおける温度反応は,17∼30°Cの範囲で山型の変化を示し,23∼24°Cで全個体が休眠し,臨界温度は約26°Cであった。この日長,温度反応は近縁種であるタバコスズメガのカリフォルニア系統とほぼ同じであった。休眠誘導に関する日長感受期は幼虫期全般にわたり,特に5齢摂食期間の高温長日による休眠阻止効果が強かった。また,休眠覚醒に低温は必要なかったが,羽化までの日数は30∼200日と個体差が著しかった。一方,15°Cに1ヵ月置いた後,10°Cに1ヵ月間置くと,高温長日(27°C, 16L-8D)に戻した場合に羽化経過が短縮かつ斉一化され,休眠が終了していた。また,休眠蛹を10°Cで8ヵ月冷蔵した後も羽化率は90%を維持し,雌1頭あたり271粒の産卵数が得られた。今回の長期保存法によって,年間を通じて休眠蛹を随時,羽化・産卵させることが可能となった。