日本応用動物昆虫学会誌
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薬剤抵抗性ケナガカブリダニの発育,産卵能力,休眠性と生殖的親和性
望月 雅俊
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1996 年 40 巻 2 号 p. 121-126

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抄録

ハダニ類の重要な捕食性天敵であるケナガカブリダニについて,茶園から得られた合ピレ剤-有機リン剤-カーバメイト剤抵抗性系統(SEL10)を含め,日本各地から採集した系統の発育,産卵能力,休眠性を比較した。また優良系統育種の可能性を,系統間の生殖的親和性の面から検討した。25°Cでの雌の発育期間は5.0∼5.5日で,系統間差異は小さかった。日齢のそろった雌成虫10個体の3日間当たり産卵数を指標にした産卵能力の比較によれば,SEL10系統の産卵能力は他系統に比べ劣っていなかった。また産卵数には明らかな系統間変異が認められた。短日条件下(9L-15D)では,温度が低下するほど,また採集地点が高緯度になるほど休眠率が上昇した。系統間交雑で得られた卵の孵化率,幼若虫期間の生存率には系統内の場合との差は検出されず,系統間の生殖的親和性は高かった。以上の結果は,SEL10系統に代表される薬剤抵抗性系統を素材として,交雑と選抜により抵抗性系統の適応性が改善された優良系統を育種できることを示唆した。

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