日本応用動物昆虫学会誌
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松くい虫駆除薬剤の研究
第1報 γ-BHC, EDB混合剤の松くい虫駆除効果
合田 昌義酒井 清六野上 寿松石 一樹米林 俵三
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1964 年 8 巻 4 号 p. 263-271

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抄録

1). 松くい虫の防除事業は,従来主として被害木の伐倒,剥皮,焼殺法によって実施されていた。本試験は伐倒した被害木に直接薬剤散布を行なうことにより,すぐれた駆除効果をあげうるような薬剤を開発する目的で,千葉県および神奈川県下に試験地を設置し,クロマツおよびアカマツに寄生加害する松くい虫を対象に,一連の駆除試験を実施した。
2). 薬剤は殺虫剤の連合作用の理論から吟味した«γ-BHC+EDB+トリクロロエチレン»,および«ダイアジノン+γ-BHC+EDB+トリクロロエチレン»の混合油・乳剤を中心に数種の混合剤を供試し,調査は薬剤散布後18または22日目(一部1, 3ヵ月後)に行なった。クロマツ,アカマツ材に寄生していたせん孔虫の種類はCryphalus fulvus, Ips angulatus, Myelophilus piniperda, Shirahoshizo rufescens, Pissodes obscurus Sipalus hypocrita, Monochamus alternatus, Criocephalus rusticusなどであった。
3). 殺虫効果は,供試薬剤群中で«ダイアジノン+γ-BHC+EDB混合剤»および«γ-BHC+EDB混合剤»がもっとも有効であった。樹幹,集積枝条,根株処理に対して油剤は10倍,400∼600cc/m2,乳剤は10∼20倍,500∼600cc/m2散布で高い実用性が認められた。また薬剤形態間の殺虫効果は一般に油剤>乳剤であった。
4). 松くい虫の薬剤に対する種類別特異性は,感受性の高いものから配列するとC. fulvus, I. angulatus, M. alternatus, S. rufescensの順序であった。冬季散布の薬剤の効果はpositive temperature coefficientの値を示したが,実用的効果には問題がなかった。また樹皮の厚さと殺虫効果との間には一定の関係が観察されなかった。

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