抄録
アズキゾウムシCallosobruchus chinensisはアズキではよく育つが,インゲンでは未知の生育阻害物質が含まれているために生育することができず,1令幼虫で全部死亡する。またブラジルマメゾウムシZabrotes subfasciatusはアズキでもインゲンでもよく育つが,生育速度はインゲンでより速い。筆者らはこれらの原因となる物質が植物体のどの部分で生成されるかを知る目的で接木による試験をおこなった。
インゲンを砧,アズキを穂としてそれぞれ幼苗の時期に接木し,その後つぎのような管理をおこなって穂木のアズキを収穫した。
アズキ葉区-接木豆(穂木に結実したアズキ)の成分の生成にアズキ葉とインゲンの根だけを関与させるためにインゲンの葉芽を全部除去する。
インゲン葉区-同様にインゲンの葉,根だけを関与させるためにアズキの葉芽を全部除去する。
両葉区-同様にアズキの葉およびインゲンの葉,根を関与させるために砧・穂木ともに葉芽を残して放置する。
これらの処理によって得られたアズキを前記2種のマメゾウムシに与えた結果,アズキ葉区は両種とも無処理のアズキで飼育した場合と変わりがなかったが,インゲンの葉が関与したインゲン葉区と両葉区においては,アズキゾウムシで羽化率の低下が認められ,またブラジルマメゾウムシも,インゲンで飼育した場合と同様な生育期間の短縮が認められた。
以上の結果からインゲンに含まれるアズキゾウムシの生育阻害物質の生成にインゲンの葉が重要な関係を持っていること,および,ブラジルマメゾウムシの生育期間に差をもたらす原因となるアズキまたはインゲンに含まれる未知の物質の生成にインゲン葉またはアズキ葉が関与し,根の影響は少ないと推定するにいたった。
なお,各接木豆は形態的に無処理のアズキと同様であったが,インゲン葉の関与したインゲン葉区と両葉区の豆だけヘソ部に奇形を生じた。