2007 年 2 巻 1 号 p. 38-49
保健室登校をした中学生A子に対して養護教諭が行った健康相談活動のケースを作成しケースメソッドを行った。本研究の目的は、ケースの論点(養護教諭・教諭として検討・討論すべき問題点)や、養護教諭が問題解決を行うために必要な視点や情報、問題点への対応策を明らかにすること、ならびに健康相談活動の力量形成のためのケースメソッドの方法を検討することである。
分析対象としたデータは、健康相談活動をテーマとしたケースメソッドに参加した受講者17名(養護教諭、保健体育等の教諭、大学院養護教育専攻)の受講中の逐語録と感想である。実施にあたっては、研究者の一人がチューターを務めた。受講者は、事前に与えられた課題を元に、論点と問題解決のために考えうる目標と対応策を中心としてケースメソッドを展開した。終了後には感想を求めた。結果の分析は、録音から逐語的にまとめた文脈を作成し、その中で問題解決に必要な視点や情報の分析、問題点への対応策であると考えられるものを抽出した。
ケースメソッドを用いた健康相談活動のケースの検討により、養護教諭の問題解決のために必要な視点や情報の分析、問題点への対応策が、具体的に検討できるとともに、参加者にとって問題解決の視点のみならず、ディスカッションの仕方やケースの多様な視点が得られることが明らかとなった。今回得られた結果を元にケースを加筆修正すること、チューターの進め方をトレーニングすることにより、養護教諭の実践力を高めるケースメソッドの活用の可能性が示された。