日本ヒューマンケア科学会誌
Online ISSN : 2436-0309
Print ISSN : 1882-6962
研究報告
感覚・身体イメージの気づき方とアレキシサイミア傾向との関連
岡田 敦史行場 次朗
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2019 年 12 巻 2 号 p. 12-19

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抄録

 心身症と深く結びつくアレキシサイミア傾向に影響を及ぼす個人特性(身体感覚増幅傾向とフォーカシング的態度)について検討した。アレキシサイミアとは、感情の同定困難(DIF)、感情の伝達困難(DDF)と外的志向(EOT)の3因子からなる特性をもち、心身症と結びつきやすく、その上、洞察的心理療法への適応困難性もあると指摘されている。身体感覚増幅傾向とは、自覚する身体感覚を有害で支障のあるものとみなす傾向であり、アレキシサイミアとの関連が強いことが明らかにされている。一方、フォーカシング的態度とは、自身の内側の体験に対して優しく、丁寧に触れる独特の態度であり、精神的健康とは正の相関が明らかにされている。本研究では、大学生130名を対象として、トロント・アレキシサイミアスケール(TAS-20)、身体感覚増幅尺度(SSAS)、体験過程尊重尺度(FMS-18)を実施した。重回帰分析を行った結果、SSASはTAS-20に強い正の影響を及ぼした。一方で、FMS-18は強い負の影響を及ぼした。このことは、自身が感知する感覚・身体イメージに対して、否定的な自覚態度と、優しく友好的な肯定的自覚態度によって、アレキシサイミア傾向の強弱が影響を受けることがわかった。これらの知見により、心理療法(例:フォーカシング指向心理療法)などの支援により、自己の感覚・身体イメージに肯定的に気づくことを習得することで、アレキシサイミア傾向が改善される可能性が推察された。

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© 2019 日本ヒューマンケア科学学会
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