日本助産学会誌
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原著
臨床指導者が分娩介助初期の学生に期待する学びの構造
菱沼 由梨
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2008 年 22 巻 2 号 p. 146-157

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抄録

目 的
 分娩介助の指導を行う臨床の助産師(以下,指導者)が,学生に期待する学びを明らかにすることである。
対象と方法
 対象は,分娩介助初期(1~3例目)の指導を行った指導者8名である。データ収集には,まず「振り返り」場面を直接観察し,その後数日以内に指導者へ半構造化面接を行った。得られたデータを逐語録に起こし,面接内容を主として質的記述的に分析を行った。面接内容をより深く理解するために,「振り返り」場面から得られたデータを補完的に用いた。
結 果
 指導者が分娩介助初期の学生(=以下,学生)に期待する学びとして,【分娩介助例数に応じた成長】,【臨床家としての態度や感性の形成】,【臨床の場に即した現実的な学びのあり方】,【「振り返り」を生かした経験の積み重ね】,【助産師になることが最終目標】,という5つのカテゴリーを見出すことができた。これらの関係性を解釈・検討した結果,指導者が学生に期待する学びは以下のように構造化された。
 指導者は,学生が【臨床の場に即した現実的な学びのあり方】の実践を通して,【分娩介助例数に応じた成長】と【臨床家としての態度や感性の形成】を遂げていくことを期待していた。また指導者は,実習における学生の学びの基盤には,【「振り返り」を生かした経験の積み重ね】があること,さらに,分娩介助とその「振り返り」を繰り返すことで,学生の学びが【助産師になることが最終目標】へと方向づけられていくことを期待していた。
結 論
 指導者は分娩介助初期の指導を行いながら,学生が分娩介助例数に応じて成長を遂げていくこと,臨床家としての態度や感性を形成させていくことを期待し,さらにこうした段階的な成長の過程が,臨床の場に即した現実的な学びの実践と,事例ごとの「振り返り」を繰り返していくことによって押し進められることを期待していた。さらに指導者は,指導者との「振り返り」を繰り返すことで,学生の学びが,助産師になるという最終目標へと方向づけられていくことを期待していた。

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© 2008 日本助産学会
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