論文ID: JJAM-2023-0004
目 的
日本では就労妊婦の約半数が離職しており,妊娠中の不快症状が病欠や退職の理由の1つとなっている。しかし妊娠中の就業継続に関連する要因は十分に知られていない。ワーク・エンゲイジメントとは,「仕事に対するポジティブで満たされた状態を表し,活力,熱意,没頭で特徴づけられる」概念で,仕事の満足度,モチベーション等の先行要因とされている。本研究は2つの仮説;ワーク・エンゲイジメントは(1)仕事の資源が充実している人ほど高く,(2)妊娠中の自覚症状が重度な人ほど低い,を検証することを目的としている。
方 法
2019年7月~2019年11月,東京都内の総合病院2施設の産婦人科外来で,妊娠16週以上の単胎妊婦を対象に,自記式質問票による横断研究を実施した。アウトカムであるワーク・エンゲイジメントは,Utrecht Work Engagement Scale(UWES-3)を用いて評価し,二変量解析で有意差のあった変数を選択し,多変量解析を行った。
結 果
研究参加に同意した252名中,226名が質問票に回答し,140名の就労妊婦のデータを分析した。参加者のワーク・エンゲイジメントのスコア(平均 ± 標準偏差)は3.6 ± 1.3だった。多変量解析の結果,より高いレベルのワーク・エンゲイジメントに関連する要因は,上司からのサポートの高さ(β = 0.259,p = 0.008),仕事の要求度の大きさ(β = 0.267,p = 0.006),首尾一貫感覚の高さ(β = 0.276,p = 0.001),そして,年齢の高さ(β = 0.188,p = 0.024)であった。仮説については,ワーク・エンゲイジメントは,(1)仕事の資源と正の相関があり,(2)妊娠中の自覚症状と相関がないことが明らかとなった。
結 論
上司からのサポート等,職場におけるソーシャルサポートが,妊婦のワーク・エンゲイジメントを促進する上で重要であることが示唆された。