2023 年 23 巻 1 号 p. 53-66
アルバニアのアニメーションは社会主義時代の1975年から作り始められ、多くのヨーロッパの国々に比べるとより遅く誕生している。本論文では社会主義体制であった1980年代に製作された9本の大人向けアニメーションに焦点を当てる。
社会主義に賛同していた人、洗脳されていた人もいれば、制度に迫害されて苦しんでいた人、不満を持った人、そして社会主義のメリットとデメリットをよく理解していた知識人もいた。作品をどのように受け取るかは見る人の立場によって違ってくる。社会主義体制においては制作者が政府のイデオロギーに従わないといけない現実があったが、芸術と政治的プロパガンダは矛盾する側面を持っている。このことはアルバニアの大人向けアニメーションではどのように表現され、さらに、政治的プロパガンダの強制下でアニメーション芸術家はどのように芸術としての自律性を保っていったのだろうか。