アニメーション研究
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小特集「スタジオジブリ設立40 周年」
小特集論文
  • 森川 嘉一郎
    2026 年26 巻1 号 p. 21-34
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/07/10
    ジャーナル フリー

    マンガやアニメ等の中間生成物の収蔵施設の整備を想定し、文化庁は2024年度より、資料保存の対象とすべき作家や作品候補の検討を進めており、筆者はこれに参加している。ただしアニメの場合は重要な作家や作品のものを含め、現存する多くが制作会社の管理を離れ、元スタッフが保有していたり市場に流れていたりする状況にある。本稿は上記検討に供すべく、特定作家による資料の所在や取引の状況をとらえる試みとして、宮﨑駿による直筆原画類について調査したものである。スタジオジブリ学芸スタッフや元収集者への聞き取り、競売記録の調査を行った結果、スタジオジブリでは90年代から段階的に制作資料を保存するようになっている一方、それ以前は多くがスタッフにより引き取られていたことや、市場に流れた宮﨑駿直筆とされる原画類の落札価格が2020年前後に大幅に上昇し、2021年以降、中央値が200万円前後で推移していることがわかった。

小特集研究ノート
  • Joachim Alt
    2026 年26 巻1 号 p. 35-41
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/07/10
    ジャーナル フリー

    本稿では、スタジオジブリの『火垂るの墓』(1988年)では、第二次世界大戦をテーマにした日本のアニメの代表作品として認識されることに至った様々な要因について要約する。本作品はいかにも記号論における「イコン」であることを認めるが、「戦争アニメ」というジャンルにおける作品の内容については代表的な作品ではないことを明らかにする。この点について、本稿では、日テレ系「金曜ロードショー」における『火垂るの墓』をはじめとするスタジオジブリ作品の放送履歴を簡潔なケーススタディとして用いる。このケーススタディに基づき、『火垂るの墓』の位置づけに関する誤解によって生じる、戦争アニメというジャンルの研究における問題点を考察する。そして、本作が代表的な作品であるという認識が、他の作品が国際的な観客や研究者に受け入れられる可能性を阻害していると主張する。

小特集書評
日本アニメーション学会第27 回大会報告
論文
  • Kazuya Haraguchi
    2026 年26 巻1 号 p. 67-78
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/07/10
    ジャーナル フリー

    本研究は、2024年の秋クールに放送されたアニメ作品のオープニング主題歌およびエンディング主題歌におけるヒットの決定要因を検討する。世界的なヒットを記録した主題歌とそうでない曲との違いについては十分に研究されていない。YouTube MusicおよびSpotifyのデータを用いて重回帰分析を行い、音楽ストリーミングサービス上の再生回数と統計的に有意に関連する主題歌の要素を特定した。分析の結果、楽曲のダンサビリティ、アニメ・歌手の人気度、およびオープニング主題歌であることが再生回数と正の相関を示した。また、キャラクターソングや声優が歌う主題歌はヒットになりにくい傾向が示された。これらの発見は、アニメの音楽プロデューサーやクリエイターに対して、ヒット曲を生み出すために考慮すべき実務的示唆を与える。

  • 吉見 明希
    2026 年26 巻1 号 p. 79-87
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/07/10
    ジャーナル フリー

    本稿では、日本の商業アニメーション(以下、アニメ)において行われている会計実務が、制作プロセスと制作上の判断、そして表現上の特徴にどのように関係するのかを考察することを目的とする。アニメ産業は文化的側面と商業的側面が密接に結びついており、企画段階での収益モデルの設計や制作費の決定、および予算管理といった会計実務は、制作における条件の形成を通じて表現に影響しうる。

    そこで本稿では、先行研究や関連資料を踏まえて、次の2点について分析する。第1に、製作委員会方式による収益モデルの設計が、作品の位置付けや題材の選定、演出の重点に影響を与えうることである。第2に、制作費および予算管理が、作画枚数や尺、キャラクター数、背景量やCGパートの規模といった制作上の判断を方向づけうることである。そして、これらが結果として、画面上の表現にも現れうることを整理する。

  • 胡 唯伊
    2026 年26 巻1 号 p. 89-99
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/07/10
    ジャーナル フリー

    本論は、今 敏(こん さとし)のアニメーション作品『千年女優』と、『東京ゴッドファーザーズ』を対象とし、両作品における「他者」の表象をレヴィナスの倫理思想を通して考察する。『千年女優』は、生涯にわたり「鍵の君」を追い続ける千代子の語りを通じて、他者を自己の物語へと回収する〈全体性〉の構造を体現する。他方、『東京ゴッドファーザーズ』は、偶然に出会った「赤ちゃん」=〈顔〉を通じて、無条件の応答責任に開かれる世界を描く。両作品を対照することで、今 敏が現代における倫理・道徳指針の揺らぎに異なる仕方で応答し、自己愛の肯定と他者への応答という二つの極から倫理を照射していることを明らかにする。

  • 新井 佑季
    2026 年26 巻1 号 p. 101-113
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/07/10
    ジャーナル フリー

    本稿は、1950年代以降フランスのアニメーション・シーンで活動した批評家アンドレ・マルタン(1925-1994)に着目し、彼の映像観を批評実践と映画祭運営の両面から検討するものである。マルタンが思想的概念として積極的に用いた「アニメーション映画(cinéma d’animation)」という語の意義を再検討し、先行研究で示されたマルタンの「アニメーションの理念」を、彼の作品批評の分析を通じて具体的な実践の水準で理解する。この理念は、マルタン自身によって体系的に定式化された概念ではなく、彼の批評の中に断片的に現れる枠組みである。したがって、この理念には複数の理論的接続の可能性が潜在しており、その射程は発展的余地を残している。本稿では、マルタンがアニメーション映画の兆しとして評価した1955年前後の国営スタジオ作品への批評を中心に分析し、他の映画理論との照応を通して「アニメーションの理念」を発展的に再構成することで、その理論的可能性を明らかにする。

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