南アジア研究
Online ISSN : 2185-2146
Print ISSN : 0915-5643
ISSN-L : 0915-5643
研究ノート
20世紀初頭バンクーバーに おけるインド系移民コミュニティの形成
水上 香織
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 2014 巻 26 号 p. 125-147

詳細
抄録
20世紀初頭北米太平洋岸におけるインド系移民は、駒形丸事件やガダル運動といった政治的事件に集団参加したことで知られる。従来の研究ではこうした事件を生んだ北米インド系移民社会の背景を考えることは関心の主眼になってこなかった。またインド系移民の政治的事件への参加はインド系移民内の政治意識の高まりや宗教的紐帯と関連付けて論じられてきたが、背景と成り得た移民内での経済的な相互関係に関してはほとんど議論されてこなかった。 そこで1910年前後のバンクーバー市を例にインド系移民社会の背景を精査し直したところ、彼らは出稼ぎ的性格が強くカナダでの定着志向性が低い集団であったことが示された。インド系移民たちは一見移動性の高い集団であったが、カナダでの永住を前提としない場合においても経済的成功を目指す中で相互扶助的な組織を形成したりインド系移民の間に株主を求める会社を設立したりするなど、社会的紐帯を形成することがあった。
著者関連情報
© 2014 日本南アジア学会
前の記事 次の記事
feedback
Top