南アジア研究
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論文
「祖霊」とは誰か
―古代インドにおける祖先祭祀の対象とその変遷―
虫賀 幹華
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2014 年 2014 巻 26 号 p. 7-25

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抄録
古代インドの祖先祭祀として理解されるシュラーッダおよび同儀礼で祀られるピトリたちpitaraḥはそれぞれ「祖霊祭」「祖霊」と訳されてきたが、それらの概念が十分に考察されているとは言いがたい。本稿では、紀元前3世紀から後3世紀頃にかけて編纂されたスートラ文献およびその補遺文献のうち、シュラーッダに関する記述を収録している28のサンスクリット語文献を選び、祖霊という語で曖昧にされてきたシュラーッダの対象を具体的に提示した。時代が下るにつれ、「ピトリたち」すなわち〈父・父方の祖父・父方の曾祖父〉だけでなく、彼らの〈妻たち(母・父方の祖母・父方の曾祖母)〉、〈母方の祖父たちとその妻たち(母方の祖父母・母方の曾祖父母・母方の高祖父母)〉も祭祀対象として規定されたことが明らかとなった。本稿の後半では、母方親族への祭祀の発展過程を示し、それと「指定女の息子putrikāputra」の義務との関連性を仮説的に提示した。
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© 2014 日本南アジア学会
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