南アジア研究
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論文
育児支援ネットワークの構築と市民社会の役割
―デリー・スラム地域における総合的乳幼児発達支援事業とNGO の働きを中心に―
渡部 智之
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2014 年 2014 巻 26 号 p. 73-99

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抄録
本稿は、デリーの総合的乳幼児発達支援事業におけるNGOの機能を明らかにし、ポスト開発国家時代の育児支援ネットワークの構築における市民社会の役割を考察するものである。事業の官民連携化が進む中で、事業目的の効率的推進という機能を果たすNGOは貧困者の参加を事業目的に寄与する範囲に限定した。 また、事業と当事者ニーズとの齟齬解消という機能を果たすNGOは貧困者が声を上げることができる場を設けた。これらは、参加の程度は異なるものの貧困者の参加を進展させ、それぞれ貧困者の潜在能力、他人との議論や交渉を通じた協働的な能力であるキャパシティの向上に資する役割を果たし、育児を社会的に分担する基盤を構築した。つまり、育児支援ネットワークの構築における市民社会の役割を捉えるためには、参加の程度に着目する従来の見方ではなく、参加者の参加様態およびそれを媒介する市民組織の形態に着目することが決定的に重要であるといえる。
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© 2014 日本南アジア学会
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