南アジア研究
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論文
女性たちのジェンダー規範と仕事の空間
―バングラデシュの首都ダカにおける手工芸品工房の事例から―
鈴木 亜望
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2020 年 2018 巻 30 号 p. 6-35

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抄録

バングラデシュの女性は、ジェンダー規範により公的空間から隔離された存在だった。しかし、開発援助と縫製産業により、女性たちが外に出る機会が急増し、パルダ規範といったジェンダー規範や活動と空間を巡って様々な議論が生じている。本稿では、首都ダカの手工芸品生産工房を対象とし、女性たちがいかに仕事と空間を意味づけているかを、活動領域と行動範囲に関して議論する。前者では、女性たちは賃金労働を家との関係でとらえ、男性が一家の稼ぎ手であるという規範を維持しようとする。後者では、女性たちは縫製工場や家と対比して、工房を「女性たちの場所」と意味づける。女性の物理的な行動範囲は拡大しているが、それは賃金労働の場に、女性性を付与し、安全な場所と表象することによって可能にしている。ジェンダー規範は近代的なイデオロギーと対立しているように見えるが、女性たちはそれを読み換えて、より良い生活を獲得しようと実践している。

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© (C) 2018 日本南アジア学会
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